ニートになる原因は人それぞれですから、その支援も一つに定めることはできず、個々人にあわせて行う必要があります。
また、親御さんが調べつくしてアプローチした方法と、お子さんが抱えている原因がかけ離れている場合、大きな動きがないままズルズルとニート状態が長引いているケースも少なくありません。
このコラムでは「ニートの原因」をテーマに、どのような対処ができるのか、どう考えるべきなのかについて詳しく紹介します。
ここまで調べてたどり着いた親御さんに大切にしていただきたいのは、原因を追求することだけに捉われずに、今からできる「行動」を決めて「動き出す」ことです。
固定観念や価値観の違いにも目を向けながら、お子さんと親御さんの将来を考える参考としてぜひ最後までご一読ください。
目次
ニートの原因は、固定観念とは大きく異なるものが多くあります。
例えば一般的には、「怠け者」「甘え」「我が子はしっかりしているからあり得ない」といった固定観念がありますよね。
しかし、実際に支援をしていると、その原因も状況もまさに十人十色。
受験の失敗からそのままニートになったり、就職はしたけど職場に馴染めなくてニートになったりするといった形で、本当にさまざまです。
では、どのような原因や理由があるのか、代表例を次の項目で紹介します。
ニートになる代表的な原因・理由は、以下のとおりです。これだけでもかなりの数になります。
それぞれ個別に紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
ニートになる原因として、何らかの原因があって「不登校や中退を経験した」ということがあります。
不登校や中退の要因は人それぞれですが、家庭環境によるもの、いじめといった人間関係によるものなど多様性に富んでいるのが特徴です。
また、こうした経験があると友達を作る機会は少なくなり、コミュニケーションに不安を感じているといったケースも。
不登校や中退を経験している場合、その流れから就職しないままニートの状態になってしまいやすいと言えるでしょう。
先ほど軽く触れた「いじめ」は、単体でも十分にニートの原因となるものです。不登校や中退にはならなかったとしても、その後に大きな影響を与えます。
学校・職場・家庭内・友人関係・ネット上の交流などの場から、いじめを受けたことで人間関係や社会に不安を募らせることで、そのままニートとして過ごすというのは意外に多くある事例です。
普段はおとなしい性格(温厚)なお子さんに多く見られますが、ネットが普及した現代ではいじめも多様性があり、思っている以上に当てはまりやすい原因となります。
ニートになる原因として、コミュニケーションに苦手意識がある場合も考えられます。
例えば、厚生労働省が公開しているニートの状態にある若年者の実態および支援策に関する調査研究報告書(概要)では、「人に話すのが不得意」であるとの回答が「64.4%」と高い数値でした。
ニートから社会復帰として働く際にどうしても経験する「面接」「職場の人間関係」などの苦手意識が、広く共通する特性であることにも触れられています。
こうしたことを考えると、コミュニケーションに苦手意識を持つケースは多く当てはまるはずです。
家庭環境があまり良くない場合も、ニートの原因の一つです。具体的な虐待とまでいかなくても、家庭内で抑圧されてきたなどもあります。
例えば、親の顔色をうかがって過ごす癖がある場合、「人から気に入られる自分」になるための努力によって、徐々に活力を失ってしまうでしょう。
また、欲求を抑えてしまったことでいつの間にか心身のバランスを崩したり、必要以上に他人への承認欲求(認めてもらいたい気持ち)を押し付けてしまったりすることもあります。
子どもが育った環境次第で、その過ごし方も大きく異なりますので、ニートの隠された原因としてあらためて考えなおす必要があるのかもしれません。
家庭環境の一つとして「親の過干渉や過保護」が原因になることもあります。
「子どものためを思って」と口にする親御さんの気持ちとは裏腹に、お子さんはその過干渉や過保護によって「自分の人生の決定権」をなくしてしまっているケースをちらほら見かけるためです。
こうした言葉は、親がいないと自分では何もできないと考えたり、自分がしたい未来に向かって歩き出す力を失ったりします。
そうした結果、何もしたくない・どうでもいいといった無気力を引き起こすことで、ニートを選ぶ悪循環を生み出してしまうわけです。
あくまでも一例ですが、子どもが自立するために必要なのは「適度な支援」ですから、過干渉・過保護な対応は親御さんがニートの原因となる可能性があることは言うまでもありません。
自分に自信がなく、強い劣等感を持っていることもニートの原因となります。
自分では何も決めてこなかったり、何かしらのコンプレックスがあって他人と比べたりすると、その劣等感に苛まれます。そして人との関わり合いに不安を持ってしまいます。
自分が劣等感を抱えている部分を他人に見せないように、他人との交流を避けてしまうため、自然に働くという選択肢が失われてしまいます。
また、劣等感だけに限らず「自分に自信がない」のも一つの原因となります。
例えば、怒られることに敏感であったり、自己肯定感が低かったりすると、以下の傾向が癖づいてしまいます。
こうした失敗・挫折する経験を積み上げてしまうと、自分の自信を失ってしまって、働くという前向きな選択肢が自然に消えてしまう可能性が高いです。
また、ニートの状態にある若年者の実態および支援策に関する調査研究報告書(概要)では、「仕事をしていないとうしろめたい」と答えた人が82.8%もいますから、自信がなくて働けないけどうしろめたい気持ちがあるといった板挟み状態になることも。
自信がないだけでもニートの原因になりますから、その多様性は十分にお分かりいただけるはずです。
ニートを選んだ背景には、仕事のミスや失敗の経験などがあるケースがあります。
こうなるとまた失敗をするのではという恐怖から、ニートを選びやすくなります。
また仕事に限らず「ミスや失敗による挫折経験」は、多くのニートを選ぶお子さんに共通しますので、当てはまるケースは相応にあるでしょう。
真面目で責任感が非常に強いお子さんは、うまくできない自分を責めて追い詰めることで働けない状態に陥るケースもあります。
罪悪感や自責の念から抜け出せないことで、次に活かせずに一歩を踏み出せません。
自分が耐えられない状態になってしまったため、ニートという選択肢で身を守ろうとすることもしばしばあるわけです。
日常生活は、必ずしも普段の生活と仕事だけに限りませんから、失恋によって心の傷を負った場合も気分が落ち込むことで「何もしたくない」という無気力状態になる可能性が十分にあります。
この場合、時間が経過すると前向きになれるケースがほとんどですが、場合によってはそのまま働く・動き出すという活力を失ってニートの期間が長期化する恐れもあります。
恋愛はお子さんだけの問題ではありますが、ある程度の期間を経ても動き出せない場合は、親御さんからの支援も検討する必要がでてくるでしょう。
仕事そのもの以外にも、ニートの原因は潜んでいるのです。
ニートのお子さんが年齢を重ねていくと、徐々に希望できる就職先が限られてきます。それが原因で動き出せなくなってしまうことも多々あります。
20代は未経験でも働ける選択肢が豊富にあっても、30代後半となると受けられる支援は減りますし、求人も即戦力を求める傾向が強まりつつある年齢ですからさらにハードルが高くなるでしょう。
年齢を重ねると、それにあわせて空白期間(ブランク)も生じますので、書類選考から不安を感じて動き出せない・または面接までたどり着けないといったこともあります。
こうしたいわゆる中年ニート・無業者と言われる年代であれば、以下の記事も参考にしてください。
【関連記事】中年ニート・中年無業者とは?状況から脱却して就職するためにすべきこと
ニートで引きこもり状態になる原因は、心理状態も大きく関係します。
前述したように、劣等感や心の傷といったものによって心理状態が不安定な場合、それを理由に働くことから離れてしまうためです。
また、家庭環境によっては親へ本音を伝えることができず、押し図るにしても限界がありますから、その多様性に富んだ心理状態にあわせた適切な支援を見つけるのも一苦労です。
こうしたことを考えると、ニートになった原因や理由を考えても明確な答えを出せず、気がつけば1年・また1年と時間だけが過ぎていく悪循環まで引き起こしてしまいます。
ここで大切なのは、ニートの原因・心理・理由を突き止めることが「本当に解決につながるか」と言うことです。
たしかに、お子さんがニートを選んだ原因を知りたいと思う気持ちは、なんとかしてあげたいと言う親心ですから誰にでもあるでしょう。
しかしその間にも時間は過ぎていきますから、年齢を重ねるほど就職が厳しくなり、社会復帰に対応できなくなってしまうのも実情としてあります。
大切なのは、解決するためには「具体的にどのような行動を起こせるか」、そしてそれに向かって「動き出せるか」です。
【関連記事】引きこもり状態の心理は?解決に向けてできること
ニートになりやすい子どもの代表的な特徴や傾向は、以下のものが挙げられます。
周囲に気を配れる人ほど、周りとの衝突を避ける傾向が強くなりますから、ニートという選択肢で人間関係のトラブルを未然に防ぐ可能性は十分にあります。
また、自尊心が高いと1度の失敗で傷つきやすく挫折しますし、自分の世界を持っている人は協調性と自分のことで板挟みになり、ニートで自らを守ろうという動きが強まるのかもしれません。
そして、いずれの場合もコミュニケーションの苦手意識がどこかであると言うのも共通項でしょう。
あくまで一例ですので、必ずしも当てはまるものではありませんが、特徴や傾向から考えて何か支援の方法を探してみるといったことには使えるはずです。
なお、引きこもりやニートは親御さんにも特徴が共通している可能性がありますので、以下の記事も参考にしてみてください。
【関連記事】引きこもりの特徴を属性別に解説|当てはまる場合の対策は?
ニートになる原因は、前述のように本当に様々なものがあります。
そこから引きこもり状態になると、親御さんはますますどうしたらいいか悩まれることでしょう。ニートになりやすい性格の子どももいます。
原因の特定が難しいのは、こういったいくつもの要素が合わさっているケースが多いからです。たったひとつの原因でという場合は少なく、たいていはニートの原因は複合的です。
更にニート状態が長引くと、「長期化した原因」というもう一つの要素も増えます。これも以下のような様々なものがあります。
ニートになった原因は複雑で、子ども本人もあまり分かっていないケースもよくあります。
ですからニートの原因を追求するよりも、具体的な対応をしていき、その中で見えてくる問題について考える方が現実的と言えるでしょう。
次は親御さんができる対応について述べていきます。
親御さんがニートのお子さんにできる対応は、以下のとおりです。
ニートであっても、引きこもりであっても、基本的な対応は同じです。
まずは、親御さんが自分に負担をかけてしまわないように、心身を整えることからはじめましょう。
お子さんの気持ちを考えることは大切ですが、感情的になれば精神的・肉体的なストレスをお互いが抱える結果となりやすいものです。
お子さんがニートから抜け出すために、背中を押してくれる大切な存在が「親」です。
抱えきれない重荷を背負って過ごすより、自分の世界を大切にしてみたり、友人に会っておしゃべりをするだけでも、心の余裕が生まれます。
ゆとりのある状況は、お子さんに対する言動にも現れてきますから、ニートの支援を考えたときはまず実践していただきたいです。
何よりもこの後の「価値観の違いに気づく」ためには落ち着いて自分の考えと向き合わなければなりませんし、「支援機関に相談する」には冷静に支援機関を探して選ばなくてはなりません。
心身が整っておらず、おかしな焦りが出ている状態では、次の選択を間違えてしまうかもしれません。
まずは親御さんの心身を整えることから始めましょう。
ニートの子どもと向き合う際には、お互いが過ごしてきた環境や状況の違いから生まれた「価値観」の相違に気づく必要もあります。
例えば親御さんの世代では、正社員として生涯雇用をベースに、家や車を持って家庭を築くというのが一般的でした。
しかし、お子さんの世代では派遣やフリーランスという新たな働き方が生まれていますし、モノがあふれる時代ですから家や車などにも興味を示さない傾向が強いです。
また、やりがいや働き方にも違いがありますし、自分のために働くといった選択をしないこともしばしば。
こうした価値観の違いで頭ごなしに「間違えている」「いう通りにしなさい」と否定しても、悩みや考えを親御さんに伝えられなくなることで、ニートをさらに加速させて悪循環を生み出す可能性が高くなります。
まずは価値観の違いに気づくために、お子さん世代の価値観を知り、お子さんの価値観を探り、そして自分はどんな価値観で生きてきたのかを考えてみてください。
父親の存在を考え直すのも、ニートの支援を考えたら検討しておきたい事柄です。
ニートのお子さんを支援する際には、父親の役割が大きくなります。大半のご家庭は父親が働いてきたため、会社のことは父親の方がよく知っています。
「働くために」という話では、母親よりも父親の言葉の方が重みを感じられる可能性があります。
母親の中には、「子どものことは私に任せっきりで協力してくれなかった」と思っている方もおられるかも知れません。
ですが父親の力を発揮してもらうために、このタイミングで父親の存在を考え直すとともに、父親と話し合ってみましょう。
大切なのは、母親とは違う役割を持たせることです。母親と全く同じ意見を持ち、母親の言葉をそのまま言わせる必要はありません。
家庭内における父親の存在を考え、夫婦でうまく役割分担をしてニートの問題に向き合えるようになれば、効果的な支援にもつながるはずです。
ニートの子どもに対して、より本格的に働きかける際には「支援機関への相談」も選択肢に入れましょう。
いつも一緒にいる親御さんだけでは客観的に判断できない事柄もでてきますし、長期化(3年以上)している場合は対応がより難しくなります。
支援機関へ相談すると、ニートのお子さんがすぐに働ける状況なのか、今はもっと手前のステップから取り組むべきなのかなどの判断をしてもらった上で、適切な支援を受けられます。
また、社会復帰に必要なステップはお子さんによって異なりますので、何からはじめたらよいのか悩んだときにも、相談するだけである程度の方向性を決められて悩まずに済むはずです。
ニートのお子さんについて相談先に困ったら、ニュースタートへご連絡ください。
「家から出る」「働く」「病院に行く」など、性格や年齢・状態なども考慮して、適切な対応を提案します。
また、支援の必要がない場合はハッキリと「必要ない」とお伝えしますので、無理やり支援を行うことは一切ありません。
引きこもりとは異なり、ニートの状態にある家庭はその暮らしや経済状況の幅広さが特徴です。
まずは、お気軽な相談からその気持ちをお伝えください。
最後に、ニートの原因に関するよくある質問へまとめて回答します。
ニートの増加の原因は、人それぞれが抱える原因の多様性と、支援機関の社会的認知度の低さが関係しています。
例えば、代表的な原因を列挙するだけでも、以下のとおり多くのものが挙げられます。
そして、ニートの状態にある若年者の実態および支援策に関する調査研究報告書(概要)では早期支援の必要性と、支援機関の社会的認知度の向上が課題として取り上げられています。
充実した支援体制への取り組みは継続されつつありますが、まだまだ社会復帰を目指しやすい状態ができあがってはいないことで、ニートが増加してしまっている可能性があるというのは一つの実情でしょう(不況といった経済・社会状況は加味しておりません)。
ニートとよく一緒に考えられる「大人のひきこもり」の原因は、以下のとおり人によりさまざまです。
それぞれの原因はまばらに分布しており、その原因の多様性によって、対策もパターン化できないことがわかります。
おおよそですが、4割が仕事・2割が学校・2割が病気(残りはその他)といった割合になる見込みです。
引きこもりの原因について詳しくは、以下の記事にまとめていますので参考にしてください。
【関連記事】引きこもりの原因は?仕事・不登校・病気・親、どれが多い?徹底解説!
日本におけるニートの割合は、総務省統計局の労働力調査(2021年)によると、平均で約93万人(2.3%)です。
若年無業者を「15〜34歳までの非労働層の若年者かつ家事も通学もしていない人」、さらに35〜44歳の無業者数を加えて調査された結果となります。
2020年では約108万人でしたから、ニートへ該当する人は徐々に減りつつある傾向が見えるはずです。
しかし、その対象者である若年層は2011年で2,792万人だったのに対し、2021年には2,471万人と減少。同様に35〜44歳の人数も減っています。
それでも2.2%前後の推移が続いているとなると、減っているとは言い切れない状態にあるとも考えられます。
また、病気や妊娠等の事由を加味したものではありませんから、おおよその参考程度に留めておくのが無難でしょう。
あくまで参考ですから、ニートはその調査の実態以上に当てはまる人がいると考えて、改善へ動き出す必要があります。
ニートはなぜ働かない・働けないかの理由は、人それぞれですのでたった一つの答えにたどり着けるものではありません。
引きこもりとは異なり、ニートは中途半端に動ける分だけ「親御さんが本人の動きに期待する」可能性は高まります。
ここで大切なのが、親御さんが「本人の動きばかりを待たない」ということです。
「子どもの意思、気持ち、希望を尊重する。」というのは非常に大切なことですが、その言葉は行動に移せるような前向きなものでしたか。
ニート状態は1~3年が経過すると、本人の力は徐々に下がってしまい、自力で解決できない状態へ陥ります。
親御さんもお子さんも、「明確にこれをするとニートから脱出できる」という確かな理論で動いているものではありませんから、右往左往するのはどちらも同じです。
本人が動き出すことを期待して立ち止まり(見守り)によって長期化するより、そのような状態だからこそ親御さんが行動を起こし、ニートの根本的な改善を進めなくてはなりません。
【関連記事】引きこもり・ニートに親ができること「本人の意思を尊重しない?」
ニートになる代表的な原因には、以下のものが挙げられました。
いずれもその多様性があることがわかるほど方向性が異なりますし、こうした原因を作り出した要因もまたそれぞれ。更に今の状況が長く続く、長期化の原因もまた別にあります。
原因の追求はいくらでもできますし、その答えにたどり着いてもニートを解決するきっかけになる可能性は意外に低いです。
大切なのは、原因の追求よりも何ができるかを考えて、すぐに行動へ移すこと。少しでも悩んだときには、専門家に相談して新しい風を取り入れるという行動も大切です。
ニートの期間が長くなるほど、解決には相応の時間が必要となりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
同じ引きこもり・ニート状態であっても、その状況はそのご家族によってみな違います。
ニュースタート事務局では、ニート・引きこもりの解決のために、あなたの息子さん・娘さんに最もよいと思われる方法を、豊富な経験からご提案いたします。
認定NPO法人ニュースタート事務局スタッフ。青山学院大学理工学部卒。担当はホームページや講演会などの広報業務。ブログやメルマガといった外部に発信する文章を書いている。また個別相談などの支援前の相談業務も担当し、年に100件の親御さんの来所相談を受ける。
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