内閣府による「こども・若者の意識と生活に関する調査 (令和4年度)」の結果が、先月の2023年3月31日に発表されました。
こちらの解説、第3弾です!
今回は中高年の引きこもりについてです。
最初から読みたい方はこちら 新たな引きこもりは2.5倍⁉~内閣府「引きこもり調査」解説・第1弾 !
目次
まずは第1弾でもお伝えしましたが、調査の有効回収数のうち引きこもりが占める割合と、人口とで出した推計人数をおさらいします。
(83.9万人という人数は、内閣府ではなく、こちらが予想で算出したものです)
前回の結果と比べると、割合は39%増、人数は37%増となっています。
15~39歳は割合は31%増、人数は14%増ですから、若い人よりも中高年の引きこもりの方が増えていると言えます。
続いて、5歳刻みの割合です。
年齢が上がるに連れ、パーセンテージも上がっていきます。
均等だった15~39歳とは、だいぶ違うグラフです。
2018年の調査では、このような割合でした。
40~44歳の多さが際立ちます。
2018年当時の40~44歳の多くは、今回は45~49歳になっているはずです。
2022年 83.9万人 × 12.8%(45-49歳) = 約10.7万人
2018年 61.3万人 × 25.5%(40-44歳) = 約15.6万人
どうやら人数そのものが減っている可能性があります。
この世代の減少分と、総人数の増加分が、より上の世代に行ったということなのでしょうか。
次は外出状況です。
何と9割以上の人が、コンビニ程度の外出ならできています。
家から出ない、いわゆる「ガチこもり」の人は、7%に留まりました。
15~39歳では17.4%でしたので、中高年の方が深刻な引きこもりの割合が低いと言えます。
2018年の調査結果です。
趣味の外出をする層は確かに減りましたが、若い人ほどの減り方はしていません。
そして「ガチこもり」の割合は、14.9%から半分以下になりました。
若い人はコロナ禍で引きこもりの度合いが上がったと言えますが、中高年は逆に外出ができる人、ライトな引きこもりが増えています。
これは一体どういうことなのでしょうか。
もう1つ、40~64歳のデータを出しておきます。
引きこもりの原因に、「新型コロナウイルス感染症が流⾏したこと」を挙げた割合です。
どの年齢も大きな差はなく、どの世代も同じようにコロナの影響を受けたと言えます。
そしてこれは、現在の仕事で「専業主婦・主婦」「家事手伝い」を選んだ人や、普段家でしていることや引きこもりの原因で「家事、育児、介護・看護」に関わる回答をした人の割合です。
40~64歳の数字が抜き出ており、この世代の引きこもりの半数近くが専業主婦等であることを示しています。
ここまでで考えられることは、広義の引きこもりの人には、60~64歳を中心とした高年齢の、近所の買い物は行ける、専業主婦の人(ただし家族以外との会話はほぼない)が、かなりの数で入っているのではないかということです。
専業主婦は引きこもりなのか?
ここは様々な議論があるところだと思います。
また別のコラムで15~39歳も含めた数字を細かく見ていくことにして、中高年全体の話に戻しましょう。
実は今回の中高年の結果で、40~64歳の数字を出してくれているのは、ここまでです。
これ以外の結果は、全て40~69歳でくくられています。
引きこもりの期間、引きこもりになった年齢、原因などの質問はされています。
ですが40~69歳の数字は、40~64歳の数字を考えるための参考にはあまりならないのです。
理由は、この40~69歳の年齢の割合です。
何と65~69歳が、引きこもりの半分近くを占めるのです。
45%もの人たちの回答次第では、選択肢の順位は簡単に入れ替わってしまいます。
つまり40~69歳で出した数字は、65~69歳の影響が大きすぎて、40~64歳には流用が難しいのです。
今回の調査でどのように数字が出ているのか、もう少し解説しておきます。
例として、引きこもりの理由についての回答を見ていきます。
一番多い理由は、15~39歳と同じ、退職ではあります。
611人とは、外出状況で頻度が低い4つの回答を選び、かつその期間が6ヶ月以上を選んだ人です。
そこから第2弾コラムで図解した、現在の仕事や他者との会話状況などで省いた残りが、155人です。
この155人が広義の引きこもり群になりますが、64~69歳も含まれています。
611人については、年齢層別の割合も出されています。
ただしこれは、現在の仕事や会話の状況で約450人を省く前の数字になります。
ここから単に40~64歳を合計して割合を出したとしても、実際とは大きく異なる可能性があります。
1つ目の表では、44.5%を関係ない65~69歳が占める。
2つ目の表では、約75%をその後省かれていく人が占める。
この2つの表からある傾向を見出せたとしても、これだけ不要な数字が入っていると、全て推論の域を出ません。
ですので、40~69歳の結果について言及するのは、今回はやめておきます。
「中高年の引きこもりの半数超が女性」「40~64歳は女性が52.3%」といった報道を、今回いくつも見かけました。
ですが今回の調査結果を探しても、この数字を見つけることはできませんでした。
※もし私の見落としでしたら、お知らせください!
出ている男女比は、このような数字です。
女性が増えているのは確かですが、64~69歳を含めると、過半数には届きません。
疑問に思っていたのですが、この記事で謎が解けました。
「こども家庭庁によると、40~64歳の中高年でひきこもり状態にある人のうち、女性が52・3%で半数を超えた」とありますので、こども家庭庁に直接数字を確認したのでしょう。
中高年のひきこもり、半数超が女性 国の調査に「ようやく実態が…」:朝日新聞デジタル (asahi.com)
つまり報道のタイトルに踊っている数字は、内閣府が自らアピールしたかったものではないということでしょう。
とは言え、数字自体は事実なわけですから、そこから何か考察していくべきとは思います。
今回の40~69歳の結果をあまり重要視したくない理由は、もう1つあります。
「あなたは今までに、社会生活や日常生活を円滑に送ることができなかった経験がありましたか。または社会生活や日常生活を円滑に送れていない状況がありますか」という質問への回答です。
つまり過去か今現在で、困った経験をしたことがあるか、という質問です。
この質問に、何と53.5%が、「どちらかといえば、なかった」「なかった」と回答しています。
40~69歳の引きこもりとされた人のうち、過半数が困っていないのです。
15~39歳の結果では、この2つの回答の合計は、わずか22.9%でした。
はっきり「経験があった、または現在ある」と答えた人が、5割近くいます。
引きこもりは状態像ではありますが、支援対象とするには、やはり「困っている」かどうかは、ある程度考慮すべきです。
(生活を支える家族など、周囲だけが困っている場合もあります)
15~39歳では引きこもりで苦しんでいる人をある程度抽出できているように思います。
ですが40~69歳の結果は、「苦しみを感じている引きこもりとは違う層」がかなり混ざっているのではないでしょうか。
40~69歳の調査結果は、どこまで支援が必要な引きこもりを抽出できているか分かりません。
わずかにあった40~64歳の結果も、高年齢になるほど人数が多く、家から出られない人の割合は半減しています。
40~69歳引きこもりの人で、配偶者がいる人は53.5%にのぼり、独居の人は25.8%しかいません。
例えば単に年金受給も近いので退職し、コロナ禍で友人にも会えず、家の中で配偶者と穏やかに過ごしているような人が、かなり含まれている可能性が捨てきれません。
以上のことから、「引きこもりに分類された中高年は増えたが、引きこもりで困っている人が増えたとは言い切れない」というのが、今回の私の結論です。
中高年引きこもりに関する報道が色々なされていますが、今回の調査結果は、何かしらの考察の根拠にするには弱いように思います。
私からの中高年の引きこもりの調査結果の解説は、これで終わりにします。
みなさんは今回の調査結果を、どう考えますか?
前回(2018年)の調査結果で出た引きこもりの原因などは、こちらをご覧ください。
第4弾となる最後は、まとめになります。こちらからご覧ください。
同じ引きこもり・ニート状態であっても、その状況はそのご家族によってみな違います。
ニュースタート事務局では、ニート・引きこもりの解決のために、あなたの息子さん・娘さんに最もよいと思われる方法を、豊富な経験からご提案いたします。
認定NPO法人ニュースタート事務局スタッフ。青山学院大学理工学部卒。担当はホームページや講演会などの広報業務。ブログやメルマガといった外部に発信する文章を書いている。また個別相談などの支援前の相談業務も担当し、年に100件の親御さんの来所相談を受ける。
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