内閣府による「こども・若者の意識と生活に関する調査 (令和4年度)」の結果が、先月の2023年3月31日に発表されました。
こちらの解説、第2弾です!
第1弾はこちら 新たな引きこもりは2.5倍⁉~内閣府「引きこもり調査」解説・第1弾 !
第1弾で、男女比、年齢層、外出状況、引きこもり年数を説明しました。
次は引きこもり始めた年代です。
20~24歳が一番多く、その前後の25~29歳・15~19歳が続きます。
14歳以下と30~34歳も似た数字で、大学卒業・就職の22歳を頂点とした、なだらかな正規分布に近いイメージを受けます。
2015年のグラフでは、もっと偏りがあります。
20~24歳が一番多いのは同じですが、全体の65%が15~24歳に固まっています。
不登校・退学からそのままという人も多いのでしょうが、高校卒業も含めた社会人になる前後で引きこもりになった人の割合が大半とも言えそうです。
35~39歳が比較的多い、30~34歳の倍になっているのも特徴です。
この調査自体が39歳までが対象ですから、この人たちはこの時点でも35~39歳のはずです。
2023年現在はこの人たちは43~48歳になっていますから、以前から問題視されている氷河期世代の中心の年齢層と思われます。
非正規雇用を繰り返した末に失職し、引きこもりなったという、よく耳にするストーリーとも合致します。
2015年と比較すると、今回の引きこもり始めの年代は、大学卒業頃が中心ですが、もう少し他の年代にもきれいに広がった印象です。
具体的に個々の状況を見るには、もう少し細かい表があると大変ありがたいです。
2015年は、引きこもり年数はこのような結果表示でした。
この表によれば、15~19歳は、中学頃から引きこもり、そのまま3~5年が過ぎている人が大半と考えられます。
20~24歳は引きこもり3年未満の、大学卒業・就職前後に引きこもり始めたであろう人が半数を占めます。
25~29歳は引きこもり3~7年が、30~34歳は7年以上が中心で、やはり就職前後から引きこもり、そのまま抜け出せない人が多いのだろうなと予想できます。
35~39歳はまた違い、途中退職して引きこもりになった人が多そうです。
それぞれの人数が10人前後のため、世代全体の傾向と言うのは難しいでしょうが、個々のストーリーがかなり見えます。
ですが今回の結果は以下の数字のみで、年代ごとの細かい状況が分かりません。
やはり引きこもりに特化した調査ではない、ということなのでしょう。
次は引きこもりの原因について見ていきます。
まず2015年の調査では、以下のような結果でした。(複数回答可)
その他が一番多く、この回答の選択肢が適切なのか問題視されるような結果となっていました。
これは2009年の調査でも同じです。
それもあってか、2018年の中高年引きこもりの調査からは、選択肢がかなり増えました。
今回はその選択肢に、更に「学校になじめなかったこと」「新型コロナウイルス感染症が流⾏したこと」という選択肢が加わっています。
結果はこちらです。(複数回答可)
2018年の中高年引きこもり調査でトップだった「退職したこと」が、今回もトップでした。
この後続く40~69歳の結果もやはり退職がトップですので、どの年齢、どの時代も引きこもる原因は退職が一番多いのではないでしょうか。
なぜこの選択肢が2015年までは存在しなかったのか、今思えば不思議でもあります。
「職場になじめなかった」で網羅できると考えたのでしょうか。
実際に待遇面や仕事内容などで退職し、そのままズルズルと引きこもるケースもありますので、そういった人が抜け落ちたのでしょう。
2番目は、人間関係です。
2015年は同率3位、2018年も同率2位ですので、常に上位に挙げられる原因なのは間違いありません。
3番目が、コロナの流行です。
外出がしにくくなり、授業や仕事もリモートになるなど、生活に大きな変化をもたらしました。
引きこもることが推奨される、これまでとは全く違う世界になったようでした。
コロナ禍で倒産や解雇になり失職した人が「退職」に含まれている可能性もあるでしょう。
コロナに並ぶのが、中学の不登校です。
2015年は小・中・高の不登校を1つにまとめていましたが、今回は別々にしています。
小学校・高校・大学に比べ、中学は不登校になりやすいのかも知れません。
先程の2015年の15~19歳の引きこもり期間でも、同じように感じました。
実際に相談を受ける中でも、中学頃から人間関係などでつまづき始めたという人はよくいます。
増やした選択肢が適切だったようで、「その他」はかなり少なくなりました。
この次の設問は「最も大きな理由は」と1つだけの選択肢を選ばせています。
結果は退職→人間関係→コロナ→病気→中学不登校で、病気が少し上がりますがほぼ同じ順番です。
参考までに、外出頻度が低くその期間が6ヶ月以上という人の、年代ごとの理由はこちらです。
引きこもり146万という数字は、ここから身体的な病気を理由の人などを省いていますので、引きこもり判定の手前の人たちが挙げた理由になります。
10代は中学の不登校や学校になじめなかったが多くなっています。
人間関係の影響は、全年代の中で最多です。
コロナの影響はどの世代も30%前後ですが、30~34歳が最多です。
この時点ではリモート勤務になり外出が減った人も含まれているはずなので、そういう影響も30代前半が一番受けたのかも知れません。
35~39歳は、コロナの影響は低めなのに対し、就職活動の失敗が30代前半の倍になっています。
転職が難しい年齢だということなのでしょう。
引きこもり群の数字ではないため参考程度ではありますが、年代ごとの傾向はあります。
今回一番首をかしげたのは、新たな「最近6ヶ月で家族以外の人と会話したか」という質問への回答です。
この回答は、引きこもり群の定義にも一部使用されています。
結果はこのようになっています。
半分近い人が、外出頻度が下がったこの6ヶ月も、家族以外との会話をしています。
「ときどき」をどの程度に考えるか、「会話」の内容は何なのかも不明なので、判断は難しいでしょう。
コンビニの店員との「お弁当を温めますか」程度のやり取りを、会話としている可能性も否めません。
でもこの人たちを引きこもりと呼んでもいいのかという疑問は湧きます。
厚生労働省の引きこもりの定義では、交遊も避けているとあります。
様々な要因の結果として、就学や就労、交遊などの社会的参加を避けて、原則的には6ヶ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態のこと。(他者と交わらない形での外出をしている場合も含む。)
引用:厚生労働省ひきこもり支援ポータルサイト「ひきこもりVOICE STATION」
グラフの元である、内閣府のサイトにある結果報告はこちらです。
引きこもり群以外の人は9割以上が家族以外と会話をしていますので、引きこもりの人とそれ以外では、他人との会話頻度にはやはり大きな差はあります。
家族以外の会話はある人の中で、どんな人が引きこもり群とされているのでしょうか。
今回の調査の引きこもりの定義、いかに15~39歳の144人・2.05%という数字を出したかを、もう一度丁寧に見てみます。
まずは7,035人に外出頻度を聞き、回答を得ます。
(男女の計は7,035人になはりません。性別を「その他」にした人がいるためと思われます)
7,035人のうち、頻度の低い4つの回答をした人数は、690人です。
ここで趣味に関する用事は外出を選択した人は、最後に「準引きこもり」に分類されます。準引きこもりも、広義の引きこもりには含まれます。
外出頻度が低かった690人に、その期間を聞きます。
6ヶ月以上の回答をした人数は、494人です。
この494人を144人まで振り落とす条件が、かなりややこしくなっています。
後でまとめますが、まずは定義の文章をそのまま掲載します。
この3類型(➊~➌)のいずれにも該当しない人が引きこもりです。
これではパッとわからないので、図解します。
外枠が外出頻度が低く、その期間が6ヶ月以上の494人です。
そこから白の部分を省いた、ピンクの部分が引きこもり群であり、その人数は144人です。
引きこもりの理由のほかに、図の右下にある「あなたの現在の仕事をお答えください。(1つだけ)」という質問は、この振り分けにかなり使用されています。
回答には13の選択肢がありますが、それぞれ以下のようになります。
※半年以上、外出頻度が低い状態は続いている前提です。
1 学生・生徒(予備校生などを含む)
→1:引きこもりではない
2 パート・アルバイト
3 派遣社員
4 契約社員・嘱託
5 正規の社員・職員・従業員
→2~5:現在の仕事で「現在就業している」以外(休職・休業中など)を選ぶと引きこもり
6 会社などの役員
7 自営業・自由業
8 家族従業者・内職
→6~8:引きこもりではない
9 専業主婦・主夫
10 家事手伝い
→9~10:家族以外との会話で「ほとんどしなかった」「まったくしなかった」を選ぶと引きこもり
11 無職(仕事を探している)
12 無職(仕事を探していない)
13 その他(具体的に: )
→11~13:引きこもり
逆に、どんなに外出頻度が低くても、他人と会話がなくても、自由業や内職なら引きこもりではない。
逆に正社員でも、休職中であれば引きこもりになりうる。
なかなか難しいですが、こういう線引きになっています。
こうして出した15~39歳の144名について、年齢や引きこもり年数、引きこもりの理由などを調べたものが、前回と今回で説明してきたグラフや数字になります。
半数近くの人が家族以外との会話があったからくりが、これでやっと理解できました。
他人との会話の頻度が関係してくるのは、出産・育児・家事・介護・看護に携わる人だけでした。
例えば外出頻度が低い理由に退職を選択した人は、他人との会話の頻度に関係なく引きこもりとされます。
不登校を原因に挙げた人も同じです。
正社員で休職中の人も、外出が趣味程度におさまっていれば、他人との会話があっても引きこもりです。
引きこもりの理由トップ3である退職・人間関係・コロナ禍の人たちに、会話の頻度の条件が課されないのであれば、会話がある人数がほどほどいることは納得できます。
今回の引きこもりの定義は、不思議な部分も所々ありますが、コロナ禍でリモートワークも増える中、どこまでを引きこもりと呼ぶか、かなり悩まれたと思われます。
その結果がこのややこしい定義付けなのでしょう。
ここまで読んで、「結局うちの子は引きこもりなの? 引きこもりじゃないの?」と、と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
引きこもりの定義は、とても曖昧なものです。
何かお悩みがあるのであれば、定義に関係なく、相談されることをお勧めします。
詳細は、こちらのコラムをご覧ください。
15~39歳の解説はここまでにして、次回は中高年の結果についてお伝えしていきます。
<解説第3弾はこちら>
中高年の結果はほぼ使用できない~内閣府「引きこもり調査」解説・第3弾
同じ引きこもり・ニート状態であっても、その状況はそのご家族によってみな違います。
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認定NPO法人ニュースタート事務局スタッフ。青山学院大学理工学部卒。担当はホームページや講演会などの広報業務。ブログやメルマガといった外部に発信する文章を書いている。また個別相談などの支援前の相談業務も担当し、年に100件の親御さんの来所相談を受ける。
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