内閣府による「こども・若者の意識と生活に関する調査 (令和4年度)」の結果が、先月の2023年3月31日に発表されました。
この内容を見て、解説をしていければと思います。
目次
調査期間は2022年11月、対象は10~69歳の3万人。
10~14歳・15~39歳・40~69歳で調査票は分かれており、それぞれ1,520人・7,035人・5,214人から回答を得ています。有効回収率は約5割です。
10~14歳と15~39歳には、日頃の生活や意識を聞きます。将来像の他、人とのつながり、居場所についての質問があるのが特徴的です。
後半は外出状況に関する質問があり、外出頻度が低かった人に対して、更に質問をしています。10~14歳は数問ですが、15~39歳へはもう少し質問が多くなっています。
40~69歳への調査は、こども・若者の実態調査をする上で、比較対象として回答をお願いしています。
こちらは早々に外出状況を聞き、15~39歳と同じ質問をしています。
過去の引きこもり調査には、以下の3つがあります。
(全て翌年発表、過去のコラムでは発表年で掲載しているものもあります)
この3つの調査はどれも、調査目的に「ひきこもり」と入っています。
ですが今回の調査目的に、引きこもりという言葉は全く書かれていません。
引きこもりに関連する質問数も、過去の調査より少なくなっています。
つまり今回の調査は、引きこもりを主にした調査ではなく、広く意識調査する中で、引きこもりに関する内容も盛り込んだものでしょう。
引きこもりをどう定義しているかは、外出状況とその状態になった期間が主です。
外出状況は8つの選択肢があります。
1は「仕事や学校で平日は毎日外出する」で、週に3~4日外出など、外出頻度が下がっていきます。
まず次の4つを選択した人が、引きこもりの可能性がある人です。
ここから更に「その状況になってからの期間」の項目で6ヶ月以上を選択した人が抽出されます。
その中から、以下のような人たちを省きます。
その状況になった理由に身体的な病気や統合失調症を選択した人や、普段は家事育児や介護などに従事し最近6ヶ月で家族以外の人と時々またはよく話した人、現在の仕事で自営業・自由業・内職・家事従事者を選択した人など。(※記載は一部です)
先程の外出状況で、5が準引きこもり、6~8が狭義引きこもりです。この2つを合わせて、「広義の引きこもり」と呼んでいます。
この定義は、2015年2018年の調査とほぼ同じです。
2018年では「統合失調症」の言葉がありません。
また2018年から省く人に介護・看護従事者が加えられ、「最近6ヶ月で家族以外の人と会話したか」という質問が増え、この回答である他者との会話の頻度が新たに条件に使用されました。
2015年の調査はこの変更前のため、15~39歳の結果は前回と少しだけ違いがあるかも知れません。
見つけられた違いはこの程度なので、以前の調査と比較できるようにしてあるのでしょう。
※2018年の統合失調症の除外については、「厳密には本人の回答のみで統合失調症のケースを除外できないため、あるいは、統合失調症のケースを除外することが必須ともいえないため、今回の調査では、統合失調症と回答した者も含めた人数と推計値を併記した」と記載があります。
この表が、広義の引きこもりに当てはまる人の、調査内の人数と割合です。
中高年の調査は40~69歳ですが、2018年の調査と比較できるよう、40~64歳の数字も出しています。
この割合を人口に掛けたものが、マスコミがこぞって報じている146万人という数字です。
マスコミがどの人口の数字を採択したか不明ですが、自分で試算したところ、以上のようになりました。
15~39歳の2022年10月の日本人人口 × 2.05% = 約61.9万人
40~64歳の2022年10月の日本人人口 × 2.02% = 約83.9万人
合計約146万人
前回の調査結果は以下です。引きこもり人数ははっきり増加したことが分かります。
15~39歳 1.57%、54.1万人(2015年)
40~64歳 1.45%、61.3万人(2018年)
合計約115万人
まずは男女比です。
今回は女性の割合が増加しました。
それでもまだ、男性が過半数を占めます。
15~39歳の5歳刻みの割合はこのようになります。
どの年齢も20%前後、年齢層による違いはさほど認められません。
2015年の調査では、このような割合でした。
比較すると今回は、10代後半の数が倍になっていることが気になります。
コロナ禍で不登校が増え、そのまま引きこもり状態になったケースが多いのかも知れません。
ただ2009年の調査では15-19歳は15.3%です。
たまたま前回が少なかった可能性も捨てきれません。
次は外出状況です。
定義で使用した設問の、5から8の割合になります。
やはり8割以上の人が、コンビニ程度の外出はできています。
2015年と見比べると、大きな違いがありました。
外出ができる人が8割以上というのは変わらないのですが、趣味の外出がぐっと減ったようです。
これはコロナ禍が大きく影響しているかも知れません。
遊びの外出がはばかられる、リアルのイベント事が減りオンラインが増えた、といった要因が思いつきます。
続いて、今の外出状況になってからの期間です。
1年未満の人が一番多いのですが、30年以上という人も存在します。
39歳以下の統計で引きこもり30年となると、少なくとも小学生の途中から30代後半になった今現在まで引きこもりということになります。
2015年の調査では、一番多いのは7年以上でした。
この中身をもっと細かく取るべきだという意見があったのでしょう。
今回の調査は選択肢がかなり細かくなりました。
比較が難しいので、今回のグラフを2015年の項目に合わせます。
まだ日が浅い、3年未満の引きこもりの割合がぐっと増えているのが、よく分かります。
この人たちはまさに、コロナ禍の日常の中で引きこもりになった人たちです。
3-5年:5-7年:7年以上の比率は、ほぼ同じです。
コロナ前までは、母数は多少増えつつも、2015年頃と比較的似たような曲線で推移していたのかも知れません。
コロナで状況が変わったのは間違いないでしょう。
割合でなく人数で3年未満の引きこもりの人数を出すと、以下のようになります。
出現人数は何と、2.5倍になっています。
これは危惧するべき数字であることは、間違いありません。
最後に、ここまでの情報から感じた事柄をお伝えします。
3年未満の引きこもりの人が半数以上を占めるなら、今がチャンスでもあります。
引きこもりは3年までが解決しやすく、3年を過ぎるとそのまま10年20年と長期化する可能性がかなりあります。
この新たな引きこもりの人たちを早期に脱出させることが、全体の数字を見ると今は一番大切かも知れません。
引きこもり3年までと3年以降ではどのように支援を考えるべきか、興味がある方はこちらのコラムをお読みください。
次回のコラムでは、この爆増した15~39歳の引きこもりの人たちの中身を、引きこもった理由などから探っていければと思います。
1週間ほどでお届けする予定ですので、ぜひお待ちください!
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<解説第2弾はこちら>
半数が家族以外との会話あり!なぜ?~内閣府「引きこもり調査」解説・第2弾
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認定NPO法人ニュースタート事務局スタッフ。青山学院大学理工学部卒。担当はホームページや講演会などの広報業務。ブログやメルマガといった外部に発信する文章を書いている。また個別相談などの支援前の相談業務も担当し、年に100件の親御さんの来所相談を受ける。
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