中年ニートや中年無業者、就職氷河期世代の中高年引きこもりは、長期化しやすく就職に不利な状態ですから、第三者機関に頼って必要な支援を受ける必要性があります。
しかし、その実態や就職が困難な理由は意外に知られていません。
今回のコラムでは、「中年ニート・中年無業者」をテーマに、就職が難しい理由や受けられる支援について紹介します。
支援を受けられる年齢の幅が徐々に広がりつつあり、ぜひチェックしたい就職氷河期世代支援プログラムにも触れますので、中高年の方が引きこもりから脱出するためにも最後までご一読ください。
目次
まずニートの定義ですが、以下のようになっています。
・独身であり、普段収入になる仕事をしていない、15歳以上35歳未満の個人 (内閣府より)
・15〜34歳の非労働力人口の中から、専業主婦・主夫を除き、求職活動に至っていない者(求職活動中の人は除外される) (総務省の労働力調査より)
求職中の人の扱いなど少しあいまいなところはあるものの、大まかには15~34歳の独身で働いていない人、無業者がニートと言えるでしょう。
では中年ニートとは、どの年齢を指すのでしょうか。
ニートの上の年齢層と仮定すると、35歳以上の無業者とも考えられます。
2017年(平成29年 )には、「中年ニート」が話題になっています。総務省の平成28年の労働力調査で35~59歳の無業者は123万人、平成27年の内閣府の調査で15~34歳のニートは53万人で、「中年ニートはニートの2.2倍いる」といった内容です(日経新聞(有料))。記事の中で35歳以上を中年ニートと表現しているだけで、総務省がこの年齢を中年ニートと定義したわけではありません。
一方で、「中年」という言葉からイメージされるのは、40歳以上ではないでしょうか。中年という言葉を検索すると、多くの結果で得られたのは「40歳以上」でした。
現状のニート(若年無業者)向け支援を見ても、サポステは「〜39歳まで」、ジョブカフェは「〜34歳まで」が対象です。中年ニートの年齢層は、曖昧であることがわかります。
ニートの年齢の定義ははっきりしていますが、中年ニートの年齢は調査のために区分を作っただけで、明確な定義はないと考えましょう。一般的なのは35歳以上か40歳以上ですが、これも曖昧です。
大切なのは、こうした一般的な定義に「当てはまるか・当てはまらないか」ではなく、「中年まで継続してしまった無業状態をどのように解決していくか」です。
中年ニートや中年無業者が「就職に不利である」という背景があり、無業状態から社会復帰するためのハードルは高いことがわかります。引きこもりで他者と接点がない状態であれば、なおさらです。
独立行政法人:労働政策研究・研修機構の調査(15〜44歳が対象)によると、年齢が上がるにつれて、正社員雇用は少なくなる推移が公開されています。
10代と比べて30歳を超えると、その正社員移行立は半分まで低下しているほどです。
年齢 | 正社員移行率(2017年) |
---|---|
15〜19歳 | 29.9% |
20〜24歳 | 32.7% |
25〜29歳 | 25.5% |
30〜34歳 | 18.1% |
35〜39歳 | 15.5% |
40〜44歳 | 15.6% |
ただし、この正社員移行率は「自ら望んで離職した場合(パートから正社員にならずに辞めた等)」を含んでいるため、若干ですが正社員移行率はもう少し高くなるはずです。
ただ、正社員雇用が少なくなることを考えると、すぐに行動を起こす必要があるということは確かです。
しかし、中年ニート・中年無業者から就職を考えたときには「就職先を見つける負担が大きい」ですから、第三者の支援を受けることも考える方がいいでしょう。
具体的になぜ負担が大きいのかを、続けてご説明していきます。
中年ニート・中年無業者の就職が難しくなる理由には、以下の例が挙げられます。
あくまでも一般的なケースですが、多くはこうした理由で就職が困難となり、社会復帰できずに無業状態や引きこもりが継続します。
まず、中年ニート・中年無業者の就職が難しくなる理由として、長期の活躍が見込める人材ではないことが挙げられます。
50歳から定年(60歳)まで働く場合は、約10年が活躍できる期間ですので教育にかけるコストが見合わないとされるためです。
20代の若者であれば最長で40年は雇用できますから、勤続年数が長くなるほど育成にかけた費用対効果は良くなります。
また、日本の定年は高年齢者雇用安定法によって希望者は原則65歳まで働けて5年ほど伸ばせますが、正社員の雇用を検討している企業は定年制(勤務延長制度)より、再雇用制度を利用して退職後に雇用する方法を主としているケースは7割(平成29年)ですから、長期雇用が実現しているかは曖昧な状況です(公益財団法人生命保険文化センター)。
こうした背景によって、中年ニート・中年無業者を雇う側からすると、長期の活躍が見込める人材ではないと判断されてもおかしくはないわけです。
中年ニート・中年無業者は、仕事をしていない期間(いわゆる空白期間)が長いと、本人にどれだけ非がなくても問題があると見られてしまいます。
日本の雇用制度では、正社員として雇用すると大きな失敗がない限りは、そう簡単に退職させられないように、働き手を守るルールが細かく定められています。
そうすると、企業側は厳しい目でその人を見極めなくてはならず、仕事をしていない期間が長いほど懸念を与えてしまい、結果として就職の難易度が上がる可能性があるわけです。
中年ニート・中年無業者は、自らが意図していないことであっても、正社員で採用されにくいのが現実でしょう。
そして、中年ニート・中年無業者の空白期間は、他者との交流の少なさにもつながり、人間関係を不安視される可能性もあります。
本人が人間関係の構築に苦手意識を持っていたり、企業側が色眼鏡(上司が年下・同僚の年齢が低い等)で見てしまって判断したりするなどが考えられるためです。
また、未経験者からでも働ける求人で若い人と一緒になった場合、長く雇用できる若く将来が有望な人材を選ぶといったことも起きかねません。
つまり、中年ニート・中年無業者で引きこもりの場合、「長期間働けない・空白期間で問題を疑われる・人間関係を不安視される」という3つの理由から、社会復帰のハードルが高い傾向があるわけです。
総務省統計局の労働力調査では、中年ニートの人口の割合・人数は「2010年に60万人」、「20年には69万人」にまで増加しています。
無業者では、99万人(2010年)だったのに対し、108万人(2020年)と徐々に増え続け、35歳から44歳までの無業者割合は2.1%から2.5%(人数にすると約36万人)を推移しているようです。
中年ニートの割合や人数が少なくありませんから、少しでも早いうちに動き始めて、社会復帰を目指しましょう。
ニュースタートでも40代の支援経験はたくさんあります。多くの方が働き始めて、自立をしていきます。
「自分だけではない」という気持ちで、支援を利用することも考えてください。
就職で厳しい状態である中年ニート・中年無業者の人でも、就職しやすい仕事は以下のものがあります。
IT関係や介護福祉などの人材不足が懸念される業界は、常に人手不足ですから就職先の候補となります。
また、必要な資格においてもハローワークに限らず、無料の支援までそろっているため取得しやすいのも利点です。
場合によっては、職業訓練によって生活に必要な資金補助を受けながら、資格取得を目指せるものもあるでしょう。
人手不足が懸念される業界であれば、求人も豊富で条件に合うものを見つけやすいですから、候補の一つとして考えられます。
次に、特殊な資格やスキルを必要としない業界も、就職のハードルが低い傾向があります。
例えば、清掃業・飲食店・小売業などが代表例です。
接客が苦手な場合は、調理スタッフといった人とかかわる機会が少ないポジションを探せますし、清掃は未経験歓迎の求人があって見つけやすいのも利点です。
また、夜勤や不規則勤務の募集まであるため、働きやすい時間帯から選びやすくなります。
ただ、いずれも就職しやすい仕事であって確実性はなく、その手前の履歴書や面接で挫けるケースもあるはずです。
そのため、サポステといった第三者機関での職場体験やボランティアなどの方法から、徐々に慣れていくことも検討しておきましょう。
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引きこもりでもできる昼夜逆転の治し方|簡単にできる方法と根本の解決を解説
引きこもり・ニートで就労支援は受けられる?仕事探しの解決策とは
最後に、中年ニートや中年無業者に関するよくある以下の疑問にまとめて回答します。
中年ニートや中年無業者の就職は、年齢を重ねるほど難しくなります。
就労支援には以下の4種類がありますが、年齢制限や条件によって利用できないケースが出てくるからです。
就労支援名 | 対象者 |
---|---|
ハローワーク | 15〜39歳 ( 執筆時点は氷河期世代対策のため一時的に49歳まで利用可) |
サポステ・ジョブカフェ | 原則15歳〜34歳 (都道府県により異なる) |
生活困窮者自立支援 | 年齢に関係なく相談できる |
就労移行支援 | 障がいをお持ちの方 (原則24か月しか利用できない) |
就職や社会復帰について詳しくは、以下の記事にまとめているので参考にしてください。
引きこもり・ニートで就労支援は受けられる?仕事探しの解決策とは
中年ニートや中年無業者の人であっても、社会復帰は目指せます。
ただ、無業状態や引きこもりの期間が10年以上になると、その状態から抜け出すのが難しくなるため、早い段階で解決に向けて第三者からの支援を受けましょう。
8050問題につながったり、就職難易度が高くなったりするリスクを考えると、できる手段を増やすためにも早期の相談が好ましくなるためです。
詳しくは、以下の記事にまとめているので参考にしてください。
引きこもりが10年以上続いている|今からできる社会復帰や対策は?
中年ニート・中年無業者や中高年引きこもりの状態が続くのは、自らへの甘えや言い訳ではないかと世論として見られるケースがあります。
ただ、一言に甘えや言い訳で引きこもりとなっているとは言い切れない状況でもあります。
例えば、自治体窓口を対象とした調査(2017年)では、本人に関する相談では「40代が62%」、本人の兄弟姉妹から相談を受けるケースが「約30%に上る」という結果が示されました。
しかし、2016年に内閣府が実施した引きこもりの実態調査では、「2010年より支援によって15万人減った」という内容の説明があり、自治体窓口の実態(相談者は多くいる)とはかけ離れていると考えられます。
こうした背景を考えると、引きこもりが続くのは行政の対応遅れも原因の一つとして挙げられ、甘えや言い訳と断定するには情報が少ないといえるでしょう。
現在は厚生労働省よる、中年ニート・無業者に向けた「就職氷河期世代支援プログラム(3年間の集中支援プログラム)」が実施されています。
就職が厳しかった就職氷河期世代で、働いていない、または不本意ながら不安定な仕事を続けている人に向けた支援です(厚生労働省:就職氷河期世代の方々への支援のご案内)。
氷河期世代はバブル崩壊後に就職時期を迎えた、1970年生まれからと定義されていることが多いようです。それぞれの相談窓口により対象年齢がありますが、下は35歳から、上は49歳や54歳までといった数字が並んでいます。
このプログラムの一環で、サポートステーションの対象も39歳から49歳まで一時的に引き上げられています。それ以外でも、引きこもり支援センターの対象年齢の撤廃も徐々に進んでいます。
中年ニート・中年無業者の、特に40代の人には、使える支援が多い今が大きなチャンスです。
中年ニート・中年無業者でブランクが数年を超える場合は、社会復帰を目指すときにいきなり正社員(アルバイトを含む)を目指すのではなく、職業訓練や体験からはじめてみましょう。
例えば、ニュースタートの寮生活では、人間関係を作る練習や仕事の体験を通して、徐々に働く経験を積める環境を整えています。
事務所にはサポステが併設されているため、サポステを気軽に利用することもできます。サポステでは各種講座や提携企業での体験などを提供しており、先ほどの就職氷河期世代支援プログラムによって現在は49歳まで利用できます。
外に出ることが難しいケースでも、ニュースタートの訪問支援によって少しずつお子様と外をつなげることで、引きこもりから脱出する支援を継続できます。
また、ニュースタートでも40代は珍しくなく、50代まで支援経験があり、多くが自立に至っている状況です。特に企業での体験でその真面目な仕事ぶりを見てもらい、年齢というハンデがあっても就労できている人が多くいます。
中年ニート・中年無業者であっても、無業状態や引きこもりから脱出するチャンスは十分あります。ご紹介したほかにも、中年ニート・中年無業者でも受けられる支援やその手法はありますから、まずは気軽にお問い合わせください。
中年ニート・中年無業者とは、決まった定義はありませんが、およそ35または40歳~59歳の独身で働いていない人のことを指します。
中年ニートは、年齢的に長期に活躍が見込めない、問題があると見られてしまうことなどから、若い人よりも正社員で雇用されにくい状況があります。
正社員移行率(2017年調べ)を見ても、20代と比べてその確率は半数の約15%ですから、働いていても正社員になりにくい、厳しい現状に置かれています。
引きこもりや就職難から脱却するためにも、まずは就労支援やボランティア活動など、少しずつ社会とのつながりを増やしていく支援が必要です。
ニュースタートは40代の利用者も多く、それぞれ自立に至っている支援実績があります。単なる無業というだけでなく、他者との関係がなく家からもあまり出ない引きこもり状態であっても、できることがあります。
中年ニート・中年無業者に当てはまるからと諦めず、まずはお気軽にご相談ください。
同じ引きこもり・ニート状態であっても、その状況はそのご家族によってみな違います。
ニュースタート事務局では、ニート・引きこもりの解決のために、あなたの息子さん・娘さんに最もよいと思われる方法を、豊富な経験からご提案いたします。
認定NPO法人ニュースタート事務局スタッフ。青山学院大学理工学部卒。担当はホームページや講演会などの広報業務。ブログやメルマガといった外部に発信する文章を書いている。また個別相談などの支援前の相談業務も担当し、年に100件の親御さんの来所相談を受ける。
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