自立できない…引きこもり支援、イメージを変えたい!

皆さんは、「引きこもり」という言葉に、どんなイメージをお持ちですか?

大半の方は、じっと家に居る、動けない、孤独な、暗いイメージを思い浮かべるのではないでしょうか。
明るい言葉と捉えている人はほぼいらっしゃらないでしょう。

なぜ「引きこもり」のイメージは暗い?

なぜ「引きこもり」は、暗いイメージを伴うのでしょうか?

その理由ですぐ思いつくものは、引きこもりとカテゴライズされた人が起こした、様々な事件です。

無差別殺人事件は有名なものがいくつもありますし、親子間の殺人事件はかなりの頻度で起こっています。

そういった事件が起きると、どうしても引きこもりが問題視されてしまいます。

この影響はかなり大きいでしょう。

引きこもりは「長期化する」という事実

そしてもう1つ影響が大きいと思われるのは、引きこもりの長期化です。

内閣府の調査でも、長期化の傾向ははっきり表れています。

最新の2023年3月に発表された結果は、元々の引きこもりの人たちに、コロナ禍で新たに引きこもった人が上乗せされたような結果です。

引きこもりの推定人数がぐっと増え、コロナ禍になって以降の3年未満の引きこもりの割合も高くなっています。
この傾向が一時的かどうかの判断が難しいので、この期間のデータを元に言及するのは避けます。

その前の、2019年の調査では、例えば中高年(40~64歳)引きこもりの半数近くが7年以上30年以上すら何と6.4%もいたのです。

引きこもりは「解決しない」イメージ

一度引きこもると、解決しない、長く引きこもり続ける―――

他人との関係性はないまま、長期化し、中高年になり、行きつく先は8050問題―――

そんなイメージがついてしまっていると言えるでしょう。

これでは親御さんは、お子さんが引きこもると、「このまま10年引きこもり続けるのかも」と心配になるはずです。
アドバイスを受けて、頑張って平常心で受け止めようとしても、難しいのが当たり前です。

このイメージを変えるには、引きこもりに「解決できる」「自立できる」といった、プラスのイメージつけていくことが大切だと思います。

実際に私たちが引きこもりの人たちと対峙しても悲壮感がないのは、「最後は何とかなる」という、経験から来るイメージが関係しているのは間違いありません。

引きこもりは「解決しない」のが実情?

引きこもりに、「解決できる」「自立できる」イメージをつける。

そのためには、「解決できている」「自立できている」という事実が必要になります。
嘘のイメージをつけても仕方がありません。

ですが、引きこもり支援全般では、自立できたという話を見聞きすることがあまりないのです。

私たちニュースタートは、年度によりますが、寮生の7割から9割の人が自立できています。
自立率が7割を切った年は、寮を運営しているこの約25年で、恐らく1度もありません。

でも他所の方にそう話すと、驚かれます。
信じられない」「元気になるイメージができない」と、直接言われたこともあります。
誇大広告と捉えている方も、もちろんいらっしゃるでしょう。

どんな支援をしているかにもよるでしょうが、実際に自立できた、解決した人が少ないのだと思います。

支援を望まない人たちの多さ

そして内閣府の調査に限らず、自治体の調査でも、「支援や相談を希望しない」と回答する人の割合は高くなっています。

支援を求めていない人にどう対応するのか、情報提供に留めるべきなのでは、親が支援を求めるが本人が求めていない場合はどうかなど、様々な議論の元になっています。

この支援を望まない理由は、もちろん様々なものがあるはずです。
その中の一つに、「相談しても解決できない」というイメージは、挙げられるのではないでしょうか。

結局どうにもならないなら、わざわざ相談に行きたくない」という心境になるのは当然です。

加えて「実際に相談をしたが、話を聞いてくれるだけで、どうにもならなかった」という実体験をお持ちの方も、多くいらっしゃると思います。

つまり「相談すればかなりの人が解決(自立できる、社会復帰できるなど)する」というイメージや実績があれば、この相談を希望しない人の割合も、変化する可能性があるということです。

「引きこもりは自立できる」と知ってもらう

引きこもりは解決しない、だから相談もしない、そうやって家族だけで抱え込んでさらに長期化する―――

そんな悪循環を断ち切るために、本という媒体で何ができるのかを考えました。

一つ目は世間一般に、「引きこもりの多くは自立できる、解決する」というポジティブなイメージを持ってもらうことです。

今回のタイトルは、「引きこもりの7割は自立できる」です。
希望の持てるタイトルになったと思っています。

本の中にも、8人の自立した事例が入っています。
引きこもりの人自立できる事実を、この本を通して、多くの方に知っていただきたいのです。

支援者へ「自立にはこれが大切」という内容を発信する

そして二つ目、これは支援者の方々に向けた発信です。

引きこもり支援全般の自立率を上げてもらうために、参考になりそうな内容をお伝えすることです。

実際に他所で支援を受けて何年もどうにもならず、ニュースタートに来られた方。

初回の相談で「ああこの方は自立できる」とすぐ思えるケースもありますし、支援した結果自立していく人もたくさんいます。

この人たちの自立に必要な支援が、以前の所にはなく、ニュースタートにはあった。
手前味噌ですが、客観的に見ても、そう言っていいのだと思います。

そこで、ニュースタートでは当然の考え方で、他所では違うらしいと思える内容を選び、書き記しました。

それが本の2~5章にあたる、

  • 家族をひらく
  • 信じて待つは3年まで
  • まずは親子の対話より他人との接触
  • 自立をゴールにして支援をする

の4項目です

何か参考になる箇所があれば、ご自分の支援にぜひ取り入れていただきたいと思っています。

就労支援の手前の支援が足りない

ただし、「自立をゴールにした引きこもり支援を」とお伝えしていますが、自立が全てだとは考えていません

引きこもり支援は、様々なゴールがあって然るべきです。
ただ、自立を目指した、自立できる支援が少ないと感じています。

自立支援=就労支援と考えてしまう方が多いのも、一因でしょう。

サポステやジョブカフェなど、就労支援は数はかなり揃っています
それでも自立率が上がらないのは、就労支援のもっと手前の支援が不足しているからです。

「信じて待とう」でそっと見守り支援に向けて動かさないなど、現在浸透している考え方も影響は大きいと思います。

引きこもり支援についての考え方、やり方を変えると、自立率は上がる可能性が十分にあるのです。

自立は人生の大きなステップ

もし引きこもりの人が、支援によってかなりの割合で自立ができるとしたら。
そんなイメージがつき、実績も伴った状況になったら。

もちろんその方が抱える悩みや生きづらさが、自立で全てが払しょくされるわけではありません。

それでも家に居て何もできていない状態と、少なくとも自立はできていますという状態では、立場も見えている世界が変わり、悩みの中身も変わって来ると思います。

なので私たちは「自立」をゴールにした支援をしています。
7割の人は、それができるからです。

「自立」はその人の人生の、大きなステップになるはずです。

引きこもりのイメージ、支援が変わるために

引きこもりの「自立できない」「解決できない」イメージを少しでも変えたい。
そして実際の支援の自立率も上がってほしい。

これが私がこの本に込めた想いです。

例えば、背中を押せば自立できる人が、周囲が「信じて待とう」と見守り、ただ長期化している
そんなケースが減って欲しいと願っています。

そのための、自立できた事例であり、「信じて待つは3年まで」の考え方の説明です。

この本がどなたかのターニングポイントになれば、とても嬉しく思います。

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ニュースタート事務局では、ニート・引きこもりの解決のために、あなたの息子さん・娘さんに最もよいと思われる方法を、豊富な経験からご提案いたします。

執筆者 : 久世 芽亜里(くぜ めあり)

久世芽亜里

認定NPO法人ニュースタート事務局スタッフ。青山学院大学理工学部卒。担当はホームページや講演会などの広報業務。ブログやメルマガといった外部に発信する文章を書いている。また個別相談などの支援前の相談業務も担当し、年に100件の親御さんの来所相談を受ける。

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