20代で引きこもりになってしまった知人や子どもがいる親御さんは、こうした心配を抱えることも多いでしょう。「学生から社会人となる切り替え時期」に、ふとしたことがきっかけで引きこもりになるリスクがあります。
ただ、20代は引きこもりが始まりやすい年代であると同時に、できる支援も多くあるのも事実です。
そこで今回のコラムでは、「引きこもりの20代」をテーマに割合や傾向について紹介します。
第三者を頼ることは恥ずかしいことではなく、むしろ20代で引きこもりに終止符を打つことこそ、お子様が歩む将来を守ることにもつながります。
お子様が抱えている気持ちや状態から考えるために、ぜひ最後までご一読ください。
目次
20代の若い世代は、何らかのきっかけが発生しやすく引きこもりが開始しやすい年代です。
厚生労働省の資料によると、以下のようなグラフになっており、「ひきこもりの開始(初発)年齢(本人調査)」では、およそ20代前半で引きこもりを開始する人が多いとわかります。
同調査では、引きこもりの平均年齢が20代後半から30代後半です。
引きこもりの平均年齢自体はあがっているにもかかわらず、開始年齢はほぼ変化がありませんので、長期化している傾向まで伺えます。同時に、引きこもりのお子様が徐々に高年齢化している点も重要なポイントです。
こうした背景から、20代という若い世代で引きこもりとなり、そこから長期化・高年齢化する傾向があるため、それに合わせた支援が求められる時代になっているわけです。
政府の統計データ「労働力調査(基本集計)2021年(令和3年)平均結果の概要」を見てみると、若者無業者(ニート)の人数が増加傾向です。
実際のデータは、以下の通りです。
年齢 | 無業者数 |
15~24歳 | 37万人 |
25~34歳 | 32万人 |
前年に比べて、20代前半の無業者が増えています。若者無業者とは、高校や大学などの学校や予備校、専修学校に進学しておらず、配偶者のいない独身者です。
加えて、普段から収入を伴う仕事をしていない15歳から34歳以下の個人を指します。日本の全人口1.258億人で考えてみると、大したことがない人数と感じるかもしれません。
しかし、15〜24歳で約9%・25〜34歳で約10%の人が無業者であり、人数以上にパーセンテージが高くなっています。
20代前半・後半で子どもが引きこもりになる原因として、一般的なものは職場の環境や病気が挙げられます。
しかしそれらはあくまでも一般的な原因であり、20代での引きこもりには、20代ならではの原因が隠れている場合があります。
20代の子どもは、「学生から社会人への切替期」です。そのため、学業を終えて社会に出るタイミングが引きこもりとなるターニングポイントとなりやすいです。
これらは総じて、『社会人への最初の壁を越えられなかった』という経験がその背景にあるのが共通点です。
ここからは、20代前半・後半でお子様が引きこもりになる代表的な原因の2つを紹介します。
それぞれ、参考にしてください。
20代前半では、働く意欲がなかったり、就活で失敗したりしたことが原因となることがあります。
具体的には、以下のような事例です。
学生時代に不登校経験がある子どもの場合、社会に出ること自体に不安や不信があり、尾を引いていることがあります。社会に出ても学生時代とのギャップに対応できず、馴染めない可能性もあるでしょう。
加えて、発達障害があることに社会人になってから気づいた場合にも、働きにくいと感じる可能性があります。こうした就活に失敗したり、そもそも働く意欲がなかったりと、20代前半に引きこもりになる可能性は十分に考えられます。
20代後半では、就職ししばらく働いいていたがうまくいかずに、退職したことがきっかけで、引きこもりになることがあります。
具体的には、以下のような事例があります。
就職先で上司や同僚と人間関係がうまくいかず、馴染めなくなってしまうことがあるかもしれません。仕事が想像以上に辛い・きつい内容だった場合に、耐えきれずに辞める人もいるでしょう。
社会人になって自分なりに馴染もうと努力しても、1つ仕事でミスをしたり怒られたりすると、自信を失ってしまう人もいます。就職先でうまくいかずに退職してしまったあと、再度職に就くことを億劫に感じて引きこもりになることもあるほどです。
就職という1つのターニングポイントは、急速に変わりつつある現代社会の情勢と、過去の価値観と変わってきた若者の考え方によってさらに格差が広がることもあります。
【関連記事】
引きこもりの原因は?仕事・不登校・病気・親、どれが多い?徹底解説!
20代で引きこもりになったお子様に対してできる対策は、以下の3つがあります。
支援を理解していれば、引きこもりを30代、40代へと長引かせてしまう心配も軽減されます。それぞれの支援について参考にしてみてください。
まず、1年間までと明確に期間を決めて、見守りから始めましょう。見守ったり待ったりする支援がプラスに働く引きこもりの期間は、1年ほどだからです。
子どもの自主性を大切にしたい気持ちは親であれば当然ですが、引きこもりは自主性だけに任せていると長引きやすくなります。たとえば、子どもが「働かなくていいし実家だし、何もしなくていいならこのままがいい」と感じてしまうなどです。
逆に、あまり早い段階で見守りをやめて働きかけようとすると、子どもは心理的な負担を感じやすく、余計に引きこもってしまう可能性もあるでしょう。
そのため、大体1年間を目安に見守ることをおすすめします。より詳しく見守りについて詳しく知りたい人は、支援を頼むタイミングについても説明している以下のページを参照してください。
【関連記事】
親だけで子どもを1年間見守っても、自主的に子どもが変わろうとしない場合には、見守りの支援は中断しましょう。
2年目からは、親による支援に切り替えます。本人と対話することが基本になりますが、本人の状況や希望に合わせて、仕事や支援の情報を渡してみるのもいいでしょう。
ただし、子どもからの暴力があったり、危険だと判断できる状況にある場合には、すぐに第三者機関に相談しましょう。具体的には、ひきこもり地域支援センターや全国にある相談窓口が活用できます。
また、親だけによる支援は、2年間やってみてダメなら潔く諦めることも大切です。第三者による支援を入れて、自分は親の立場できちんと協力しましょう。
より具体的に知りたい人は、以下のページを参考にしてみてください。
【関連記事】
引きこもり・ニートに親ができること「本人の意思を尊重しない?」
最後に、第三者から支援を入れたほうがよいタイミングが1年から3年以上です。ひとつの支援にはどうしても限界があり、どこかで「違う方法や違う人による支援を試すほうがいい」という判断が必要になります。
第三者機関は、家族からの電話相談や、医療・福祉・教育・就労といった適切な支援機関につなぐ役割があります。各都道府県に設置されている「ひきこもり地域支援センター」や、NPO法人、全国の社会福祉協議会などで相談できます。
上記のように、ひきこもりや依存症、子育て、発達障害、知的障害、こころとからだの健康相談などさまざまな相談先があります。親だけではどうにもできないことも、第三者からの支援があれば子どもにも変化があるかもしれません。
就労支援なども受けられる可能性があるため、子どもが自然に引きこもりから脱出できるように、明確な期間を決めて第三者からの支援に切り替えてみてください。
あくまでも特徴や傾向であるため、必ず当てはまるものではありませんが、20代から引きこもりになりやすい人の特徴や傾向をまとめました。
それぞれ具体的に見ていきましょう。
不登校の経験がある子どもの場合、学校と同じように職場でもつまづく可能性があります。
不登校の背景には、人間関係・就職活動での挫折が隠れているかも知れません。たとえば、学校での友好関係がうまくいかなかったり、何か思い通りにいかなかったりした経験などです。
こうした人間関係への苦手意識があると社会人になってからも引きこもりになりやすいでしょう。社会人はお金をおもらう立場ですから、学校よりも多くを求められます。結果を求められる厳しい環境には適応できない可能性があります。
社会の価値観と合わない子どもは、引きこもりになりやすい傾向があります。
たとえば社会では、以下のような人材や価値観が求められます。
必要とされる人材は会社によって異なりますが、現代社会や企業が好ましい人物像に合わないと、職を選んで仕事ができません。そのため、ハードルが高いと感じて社会に出ることを億劫に感じてしまう可能性があるのです。
とくにコミュニケーション能力や周囲との人間関係の構築については、不登校の経験があると潜在的な苦手意識があるため、さらに引きこもりやすくなると考えられます。
以下のような心理的な負荷がある子どもも、引きこもりになりやすい傾向があります。
20代となり、働くことを通じて社会に飛び出したときに、他人とコミュニケーションを取らずに過ごすのは非常に難しいです。そこで、人間関係を築くことが苦手に感じたり、自分が没頭している世界のみで生活したいと感じたりと、心理的な負荷がかかり引きこもりやすくなります。
また、うまくコミュニケーションができたとしても、職場での失敗や挫折の経験からうまく立ち直れずにそのまま心を閉ざしてしまうことも珍しくありません。子どもの心理的負荷を軽減したいからと、過剰に親が子どもの心に入りこもうとすると、余計に拒否反応を起こすこともあるでしょう。
デリケートな問題ですが、個々の特性としっかりと向き合うことが求められます。
【関連記事】
20代の引きこもりは親のせいなのではないか、と気にしてしまう人もいるはず。しかし、子どもの引きこもりは、親の責任だけで引き起こされることはありません。
内閣府の「若者の意識に関する調査」では、引きこもりの原因に「親」の項目はなく、職場や病気などが原因として挙げられています。子どもが引きこもってしまったとき、どうしてもこれまでの生活環境や家庭環境のせいではないかと疑ってしまうでしょう。
もちろん家庭の事情が原因になったケースもあるかもしれませんが、長期化する仕組みができてしまう社会、家族、個人という3つの要素が複雑に関係しています。
親のせいだけでなく、周りの要因も多く関連していることを理解しておきましょう。
【関連記事】
引きこもりの原因は親のせい?育て方や特徴を知って新たにスタートしよう
ここからは、20代の引きこもりに関連する疑問や不安についてまとめました。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
20代の娘(女性)の引きこもりは、何が原因かが知りたい人もいるでしょう。残念ながら、引きこもり群を対象とした調査結果があっても、女性のみの統計は存在しません。
内閣府による15~39歳の引きこもり調査では、3,104人のうち49人が引きこもりとされ、より細かい質問がなされました。うち男性は63.3%で31人、女性は36.7%で18人です。
40~64歳の調査では、更に女性の数が減り、女性は32.4%で11人しかいません。
さらに、主婦を対象とした調査ではないため、実際にはさらに多くの人が該当するはずです。全体で見ると不登校や就活の失敗、職場に馴染めないなどの外的な要因が考えられます。人間関係を苦に感じている人も多いため、明確な原因を見つけるのは非常に難しいでしょう。
【関連記事】
女性の引きこもり、その原因は?男性との違いは?問題点は? 2021年最新版
10代や20代の引きこもりとは異なり、30・40代の中高年ならではの理由があるのではないかと考える人もいるはずです。しかし実際には、人間関係や職場に馴染めないなど、10代や20代と比べてあまり違いがありません。
確かに、中高年の引きこもりの理由のなかには、退職したり病気になったりといった年齢特有のものが含まれます。一方で、高齢になった親が30・40代の子どもの面倒をみることになるため、子どもの将来を不安に感じやすくなるでしょう。
中高年の引きこもりに対しての支援が強く求められているいま、相談できる機関も増えています。30・40代の引きこもりからの自立は可能なため、悲観しすぎたり事件に発展したりと最悪な状態を招かないよう、まずは相談から始めてみましょう。
【関連記事】
中高年引きこもり、原因・対策・40代は…全て解説します! 2022年最新版
引きこもりで昼夜逆転している子どもをみて、どうすればよいのか困っている人もいると思います。引きこもりになると、寝る時間や起きる時間など生活そのものが乱れやすいです。
昼夜逆転してしまった場合には、日中の用事を作って外とつながるきっかけ作りが大切です。昼夜逆転に直接関連しているであろうゲーム等の活動を禁止すると、逆効果となります。
引きこもりの生活から引き起こされていることを考えて、適切な支援を進めましょう。
20代の引きこもりは、早めの支援で脱出できる可能性を高められます。
素早く親の見守りと支援、第三者の支援を入れれば、子ども自身が30・40代になる前に引きこもりを解消して自立しやすくなるでしょう。心の負担が大きいと感じている子どもに対して、素早い支援は必要不可欠です。
自分で立ち直れるだろうと考えたり、まずは自主性を大切にしたいと考えたりする前に、支援を視野に入れて考えてみてください。
ただし焦りは禁物です。親の焦りは子どもに伝わってしまうため、気持ちはゆったりとさせた状態で改善しましょう。
【関連記事】
引きこもりから社会復帰する方法とは?脱出のきっかけを支援で掴もう
同じ引きこもり・ニート状態であっても、その状況はそのご家族によってみな違います。
ニュースタート事務局では、ニート・引きこもりの解決のために、あなたの息子さん・娘さんに最もよいと思われる方法を、豊富な経験からご提案いたします。
認定NPO法人ニュースタート事務局スタッフ。青山学院大学理工学部卒。担当はホームページや講演会などの広報業務。ブログやメルマガといった外部に発信する文章を書いている。また個別相談などの支援前の相談業務も担当し、年に100件の親御さんの来所相談を受ける。
→詳細はこちら