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僕は高校3年生の夏ぐらいに引きこもって、
その時は部活とか勉強を無理して頑張っていて、無理して頑張ることが正しいと思っていたんですけど、
自分のできる範囲を超えてしまい、疲れて引きこもってしまいました。
もう一つ理由があって、
僕は同性愛者で、そのことで引きこもる前は悩んでいたし、男が男のことを好きになることは駄目だと思っていたし、
誰かにバレたら終わりだと思っていたので、一生誰にも心を開くことなく孤独に死んでいくんだと思っていました。
今考えたら、そんなことはないと思えるんですけど、当時は誰も理解してくれないと思い詰めてしまっていて、引きこもっていました。
Kくんは●●県出身ですが、田舎と都会で、偏見や理解の度合いの違いを感じますか?
「田舎と都会」でくくれないところはあると思いますが、
僕が住んでいた地域は(人と人との)関わりが深くて密接に繋がっていて、噂もすぐに流れ出すので絶対に言えないなという部分があって、
都会だと人間関係が希薄でドライなところもあるので、僕は都会の方が心地が良いのかなと思います。
部活やセクシュアリティのことなど、いろいろな悩みが重なって、学校に行けなくなってしまったという感じでしょうか。
そうですね。
いろいろなことが積もりに積もって引きこもってしまった、という感じです。
引きこもった期間は何年ぐらいでしたか?
僕は今、21歳なんですけど、去年の11月にニュースタートに来るまでの3年ぐらいです。
引きこもっていた3年の間は、日中はどうやって過ごしていましたか?
何もしていない時間が多かったですが、
それ以外はテレビを見たり、ゲームをしたり、本を読んだり、料理や手伝いをしたこともあるし、
姪っ子や甥っ子の面倒を見たりしていました。
引きこもったことについて、親御さんはどのような反応でしたか?
最初は学校に行けと言われてましたが、ずっと引きこもっていたら、それも言われなくなりました。
僕は高校を中退したんですけど、そこからはあまり厳しく言われることはなかったです。
家にいてイライラすることもあったと思いますが、どうしていましたか?
どうしようもなく怒りがおさまらない時は、壁を壊したり、本をぶちまけたりとか、いろいろやっていました。
Kくんが親御さんに求めていたのは「アドバイス」ではなく、
「Kくんの状況を知ること」だったと言っていましたね。
親に自分の引きこもりという状態がどういう状態かを知ってほしかったですし、
できれば自分のセクシュアリティのことも含めて理解してほしかったです。
親御さんに自分のセクシュアリティのことを話せたのは、いつぐらいでしたか?
引きこもってから1、2年ぐらい経ってからです。
とにかく自分の状況を知ってほしかったということで、具体的な話はそれからだという感じですかね…
そうですね…。
親御さんは「自分の好きなようにしていいよ」とは言うものの、
実際には「こうしてほしい」という期待がにじみ出ていたと言っていましたね。
結構価値観を押し付けられていたなと感じました。
言葉は出さないけど、遠まわしで「働いてほしい」という雰囲気を感じました。
3年の間に、図書館で本を借りて読んでいましたが、
そこで二神さん(ニュースタートの代表)の本を見つけて、それを読んで来ようかなと思いました。
その本には何が書かれていましたか?
親世代についての批判も入っていたと思いますが…。
そうですね。
そういうことが書かれていて、「よく言ってくれた」、「自分の気持ちを代弁してくれた」という感じで、
(二神さんは)すごく信用できる人だなと思って、来てみたいなと思いました。
その本に出会ってから、わずか1ヶ月でニュースタートに来たんですよね。
3年間の引きこもりの末、大きく環境を変える決断をするのは怖くなかったですか?
考えると動けなくなってしまうので、行きたいと少しでも思ったので、
考える前にすぐに行こうと決めて来ました。
親御さんから、ひきこもっている状況を変えるための具体的な提案は、そんなになかったということでしょうか?
そうですね。
自分の行動を待つような感じで、特に何か言われることはなかったです。
ニュースタートではどんなことをしていますか?
僕の場合は料理を作る店で週2回、パン屋で週2回、週に4回のシフトに入っています。
その他に『ニュースタート通信』という冊子の通信委員をやっていて、委員の人達とどのような内容にするかということを話し合ったり、冊子を作る為のいろいろな作業をしています。
あとはイベントがある時のイベント係もやっていたりといろいろしています。
決まったシフト以外にも、作業の手伝いや車の運転もしてくれていますね。
寮の仲間といっしょに生活や仕事体験をするのはどうですか?
最初は緊張していましたが、3ヶ月ぐらい経ってから慣れてきたなと感じました。
いろいろなことをやってくれたので、途中でキャパオーバーで疲れてしまったことがありましたね。
家に帰りたかった訳ではなかったと思うんですけど、帰りたくなったという時もありました。
今は、自分で気持ちの折り合いをつけて、何とか乗り越えたという感じでしょうか?
そうですね。
「ニート」や「引きこもり」という言葉だけではくくれないほど、いろいろな人がいると言っていましたね。
『引きこもり』というイメージがみんな多分あると思うんですが、
ニュースタートに来て自分も『引きこもりはこういう人達がいるんだろうな』という偏見を持っていることに気付かされました。
『ニート・引きこもり』の世間一般のイメージとしては、『怠けてる』とか『絶対働きたくない』とかだと思うんですが、そうではないということですか?
そうですね。
週6日バリバリ働いている人もいますし、凄くコミュニケーションが上手な人もいますし、気を使うのが上手な人もいますし、いろいろな人がいるんだと思いました。
ニュースタートで、仕事や生き方に対する価値観に変化はありましたか?
基本的にニュースタートはゆるい感じなので、
引きこもる前までは自分には甘いけど他人には厳しい性格だったけれども、今はいろいろな人がいるんだなと思えるようになりましたし、
人それぞれみんな違う考え方を持っているから、その人を受け入れるようにすることができるようになりました。
Kくんにとって「働く」というのは、どういうイメージですか?
『苦役』です。
あまり幸せになれる様なイメージではないですね。
そうですね。
親御さんにどう思っているか知りたいということがあって、
それは『子どもが働いていて不幸になるのと、働いていないで幸せになるのと、どちらが良いのか?』ということです。
僕は引きこもる前は働くのが正解だと思って生きてきたんですけど、
働くことをゴールにするとしんどくなるから、どういう生き方が幸せなのかを考えた方が良いと思います。
親御さん世代の考え方からすると、『働かなければ生きて行けないじゃないか』と思って若者の考え方を理解しづらいと思いますが、
時代が変化していて、今の若者は正社員で働いたりすることに対してあまり良いイメージを持てない人が多いです。
自分達の考えを分からせるのが優先なのか、本人が幸せになるのが優先なのかがあると思いますけど、
今の若者は心身をすり減らして働くよりも、お金はそこそこでも仲間やプライベートを大事にしたいという人が多いんです。
働けということを一つだけを若者に言われても、それが幸せにつながらないなというのが若者の本音であって、
『仕事をしなさい』とだけ言われると『不幸になれ』と感じる若者も少なくないと思うので、
『仕事をしなさい』と言うよりは『仕事はそこそこでいいから、あなたの幸せを見つけてほしい』と言う方をするほうが若者に伝わりやすいかと思います。
僕はサポステの就労支援をまだ受けていないので、サポステを利用したいなと思います。
あとは(ニュースタートのある行徳は)都会に近いので、いろいろなイベントやコミュニティに参加したいなと思います。
それは『とにかく働きたい』というよりは、
いろいろな生き方をしている人や価値観を知りたいということですか?
ニュースタートに来ていろいろな生き方をしている人を知れたし、これからも知っていきたいと思います。
2018年3月21日若者講演会
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