子どもが引きこもってしまった。
子どもがずっと働かず、ニート状態になっている。
親は戸惑い、子どもの意思を聞こうと話しかけます。
そして、やっと聞きだした言葉を、尊重しようとします。
ですが本人の意思を尊重したために、いつまでも子どもが動かず、引きこもり・ニートが長期化してしまうことがあります。
そんなとき親はどうしたらいいのか、ご紹介していきます。
目次
「一緒に買い物に行かない?」
「カウンセリング受けてみたら?」
「このイベントに参加してみない?」
「ハローワークに行ってみたらどう?」
子どもが引きこもり・ニートになっていると、親はさまざまな声かけをするでしょう。
でも、子どもからいい反応は返ってきません。
「いや、いいよ」
「うるさい!放っておいてくれ!」
「・・・(無言)」
やっと誘いに乗っても、次もうまくいくとは限りません。
「もうあそこに行きたくない」
「なんであんなところに連れて行ったんだ!」
「俺には必要ない」
本人は嫌がっているから、その意思を尊重してあげた方がいいだろう。
でも、それでいつかどうにかなるのだろうか。
そう思いながら、ただ待ってしまう、右往左往する。
そんな親がたくさんいるのです。
子どもの意思、気持ち、希望を尊重する。
とても大切なことです。
はっきりとした前向きな意思が出てきたなら、もちろんそれを最優先にすべきです。
では、子どもからどんな意思、気持ちが出てきましたか?
その言葉は、動きにつながる前向きなものでしたか?
聞いた意思がなかなか行動に移されないまま、時間がたってしまっていませんか?
その意思をどこまで尊重すべきか、ここで考えてみてください。
引きこもり・ニート状態を1年もやっていると、本人の力はどんどん下がっていきます。
他者や社会とのリアルなかかわりが無くなり、テレビやネットが情報源という環境。
そんな中で知識や思考が伸びるはずがない、ということは想像できるでしょう。
ところが実際には、伸びないどころか、どこかがマヒしたように力が下がっていきます。
判断力、動く力が下がり、自力で解決できないようになっていくのです。
もともと本人に動けるだけの力があった子でも、その力を使えなくなっていきます。
外に出ることが必要だとわかってはいても、外に出る提案にどんどん「うん」と簡単には言えなくなる。
外に出る感覚を忘れていき、今の環境から変化することへの恐怖の方が優先されてしまう。
引きこもり・ニート期間が長引くほど、どんどん自力の解決が難しくなります。
動けないまま1年を過ぎたら、本人の意思に任せずに、ある程度介入することが必要です。
「○○の仕事でなくてはいやだ」
こう言ってなかなか仕事を決められない人がいます。
もちろん本人の希望は大切ですが、ちょっと待ってください。
その仕事を、ちゃんとわかっているでしょうか?
たとえば「人が苦手なので、事務がいいです」と言う人。
事務を黙々とパソコンや書類に向かってやる仕事だと考えていることがよくあります。
「事務は、電話に出ることも多いし、お客さんが来たら応対することもありますよ?」
とお話しするだけで、うろたえてしまうことも、珍しくありません。
仕事経験がない、少ない人の言う「希望」は、そのくらいズレがある可能性があります。
そんな表面上の言葉だけを聞いて、その意思を尊重したらどうなるでしょう。
いつまでたっても仕事が決まらないかもしれません。
せっかく仕事についても、「なんだか違う」とすぐ辞めてしまうかもしれません。
希望にこだわりすぎずに就労して、経験を積んでいかなければ、ズレは直りません。
そのことを誰かが、踏み込んで伝えていかなければなりません。
知識の乏しいと、就職に踏み切れない、ニートを脱することができません。
ですがその知識は、働いている親が自分の経験から補うことができます。
では引きこもり脱出の知識はどうでしょうか。
ほとんどの親が、未経験者、素人です。
だからこそ、本人の意思を優先するしかない、というのが実情ではないでしょうか。
でも考えてみてください。
子ども本人も、当事者ではありますが、素人です。
子どもも、「これをすれば引きこもりから脱することができる」という経験に基づいた確かな理論を持って、意思を出しているわけではないのです。
親は迷い右往左往していますが、子どもも実は同じなのです。
引きこもりが長引いていたら、私たちニュースタートのような支援団体に、相談していただきたいと思います。
中には、「親だけではもう無理です、速やかにどこかにサポートを頼むべきです」というケースもあります。
親だけで抱え込んでいると、さらに引きこもりが長期化するだけかもしれません。
子どもの口から出る意思だけをうのみにしてしまうこと。
これが本人の意思を尊重するダメなパターンです。
今の一見安定した生活パターンを壊されるのが怖くて、嫌だと言っているだけかもしれません。
子ども本人も迷路に入ってしまっていて、望んでいることが自分でも分からなくなっているかもしれません。
引きこもり・ニートから脱するための答えを、子ども自身も持っていないかもしれません。
心の中、無意識下、そこで本当にわが子が望んでいることは何でしょうか。
子どもの口から出る意思のうち、どれが表層だけなのか、どこまで尊重すべきなのか。
子どもをきちんと見て、考えてください。
子どもの暴力があるケースは、実は少なくありません。
具体的な暴力がなくても、親が全面的に子どもの希望を聞いてしまっている、という場合もあります。
親が、子どもに支配されてしまっているのです。
これが親の奴隷化です。
こうなってくると、子どもの言ってくる意思は、ますます信頼できません。
本人の目的は、自分が前進することより、親を困らせることになっているからです。
本人の口から出る意思は、親を支配するための単なる「手段」かもしれません。
子どもからの暴力がある場合は、親が本人の正しい意思や気持ちを聞き出すことは難しい、と言わざるを得ません。
親を支配下に置くためだけの、自分の未来を考えたわけではない、そんな言葉になっている可能性が高いためです。
他者、第三者に間に入ってもらう必要があります。
子どもが本当に望んでいることは何か、考えてください。
暴力は、「このままじゃつらい、何とかしてくれ」という心の叫びかもしれないのです。
「食事中は、息子と楽しく雑談します」
「家族でよく一緒にお出かけします」
楽しく会話も弾む、仲の良い親子。
一見問題はないように思えます。
ですがこの中には、子どもを動かせない「友達親子」が混ざっています。
特に母親に多いのですが、「就労してほしい」とは言うものの、「一人暮らしをする」と言われると急にさみしそうな顔をしたりします。
完全に自分の元から巣立ってしまう、真の自立は実は望んでいません。
いつまでも自分の目の届くところにいて欲しいのです。
一種の依存です。
優しい子どもは、そんな親の気持ちを察知し、自立に向かいません。
友達親子になると、子どもが飛び立ちにくい状況になります。
巣立つことにつながる行動や言葉は、親には言いにくいのです。
巣立ってほしくない親の気持ちを、子どもが自立しない理由にしてしまう場合もあります。
こうなるともう、共依存の関係です。
まずは親の側から「子離れ」することが必要です。
子どもを親から解放してあげてください。
夫婦だけで旅行に行くなど、親が自分自身の人生を楽しみましょう。
親が子離れするだけで、子どもがあっさり自立していくことも多いのです。
親が親として接し、ちゃんとした親子関係を築けていないと、子どもは心の中を表現してくれません。
奴隷化、子どもへの依存があると、子どもの言葉での「意思」はますます信頼に欠けてきます。
親は自分自身が「親」になれているか、奴隷や友達ではないか、考える必要があります。
ですが、親の考えには間違いが多いというのが、正直なところです。
はっきりとした暴力があれば奴隷だとわかりやすいのですが、仲良く話はするけれども子どもの希望を全て通していて、こちらが話を聞くかぎりでは奴隷化しているな、というケースもあります。
でも表面は仲がいいので、親は自分では奴隷だという自覚がありません。
また、親が子どもに依存している自覚というのも、持ちにくいでしょう。
特に共依存関係になっていると、互いに気付きたくない気持ちが働いているので、ますます自覚が難しくなります。
まずは親が自分自身の言動について考えてください。
奴隷なら支援機関に、友達なら子離れに向かいましょう。
それでも引きこもり・ニートが長期化するならば、その自己把握が間違っていないか、第三者や支援機関に意見を求めることも考えてください。
尊重するべきだと言われる「本人の意思」について、お伝えしてきました。
引きこもり・ニートの長期化で意思が変わってしまうこと。
知識が足りないため、実際にいい判断とは言えない場合があること。
親が奴隷や友達になっているので、きちんと意思を言ってくれていない可能性があること。
子どもの口から出る「意思」を尊重することと、解決へ向かうことは、必ずしもイコールではありません。
では、どうしたらいいのでしょうか。
引きこもり・ニートになってから1年は、本人の意思に任せてみてもいいと思います。
でも1年を過ぎてしまったら、ここまでにお伝えしてきたような様々なことがありますので、本人の意思任せではさらに長期化する可能性があります。
親の出番です。
まずは親が、子どもの口から出る意思をどこまで尊重するか、考えましょう。
子どもが本当の気持ちがどこにあるかを、子どもに向き合って見極めてください。
そして自分の知識を使い、時には支援機関に相談し、すべきことを親が決断しましょう。
親が決断をしても、子どもが従わない可能性はかなり高いでしょう。
例えば親が私たちニュースタートに支援を頼もうと考え、子どもに了解を取ろうとします。
「今度ここの人に来てもらおうと思うんだけど、いい?」
すると、子どもは「いやだ」「必要ない」と拒否するケースが、実は大多数です。
ここで親が、引きさがってしまうことがあります。
「本人がいやだと言うので、やっぱりやめます」とお電話がきたりします。
でもよく考えてみてください。
引きこもり・ニートになって1年以上たつと、生活パターンができています。
将来への不安はあったとしても、日々の生活はある程度安定しているのです。
そんな状況の人に、外部からの訪問者はどう見えるでしょうか?
安定を壊す侵入者に見えているかもしれません。
外の世界が怖くて引きこもった人には、恐怖そのものに見えてもおかしくありません。
助けが来た、なんて思ってもらえるはずがありません。
拒否されて当たり前なのです。
でも、そのまま引きこもり・ニートを続けさせても、しかたがないですよね。
一度や二度の拒否で引き下がっていては、先に進めません。
私たちが何か月も訪問し、本人が寮に入ってから1年たったころに、「親がニュースタートに頼んでくれてよかった」という言葉がやっと聞けたりします。
バイトが決まって自分自身の未来が見えるようになり、引きこもっていた時期を客観的に見るようになって、やっと言える言葉です。
大切なことは、子どもが引きこもり・ニート状態から、未来に向かって動くことです。
未来を思い浮かべて、目の前の拒否にひるまないようにしてください。
わが子が引きこもり・ニートになってしまったとき。
「本人の意思」を尊重するばかりでは、動かせないことがあります。
その理由の1つめは、本人の意思の不確かさです。
引きこもり・ニートの長期化で動く力が下がる、知識がないため素人判断の意思になっている、などの理由があります。
表面上の意思にとらわれず、子どもが本当はどうなりたいのかを考えましょう。
理由の2つめは、親子関係によるものです。
親が奴隷や友達になっていると、子どもの心の中と口から出る言葉には隔たりがあります。
親が奴隷化しているなら支援機関へ頼み、友達になっているなら子離れをしてください。
本人の意思尊重は、引きこもり・ニートになってから1年まで。
1年を過ぎたら、親が介入、決断することを考えてください。
決断したら、子どもに拒否されても、簡単には引き下がらないようにしましょう。
何より大切なことは、子どもを動かすことです。
子どもの口から出る意思を尊重することばかりを考えず、子どもを、親である自分自身をきちんと見てください。
必要に応じて、私たちニュースタートのような支援機関も使いましょう。
子どもの未来のために、いい決断をしていただければと思います。
ニュースタート事務局スタッフ 久世
同じ引きこもり・ニート状態であっても、その状況はそのご家族によってみな違います。
ニュースタート事務局では、ニート・引きこもりの解決のために、あなたの息子さん・娘さんに最もよいと思われる方法を、豊富な経験からご提案いたします。
認定NPO法人ニュースタート事務局スタッフ。青山学院大学理工学部卒。担当はホームページや講演会などの広報業務。ブログやメルマガといった外部に発信する文章を書いている。また個別相談などの支援前の相談業務も担当し、年に100件の親御さんの来所相談を受ける。
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