引きこもりの子どもを持つ父親ができること

子どもが引きこもっていたら、どうすればいいのか。

親や母親に向けた文章はあちこちにあります。
でも、父親だけに向けた文章は、なかなか見つけられません。

そこで今回は、父親だけに焦点をあてて、すべきことをお伝えします。

  • 65歳以上の父親へ
  • 65歳未満の父親へ
  • すべての父親へ

この3つに分けて説明していきますので、該当するところをお読みください。


65歳以上の父親がすべきこと 

65歳以上の父親は、母親に従おう

子どもの引きこもりを考える家族

最初は65歳以上の父親に向けてです。

65歳以上とは、団塊の世代以上になります。
この世代の父親は、母親の決断に従いましょう

「男は仕事、女は家庭」という考えでやってきた世代です。
母親の大半は専業主婦で、子どもへの関わりも母親が中心でした。
子どもの状況や流れは、母親の方がよく把握しています。

急に父親が子どもに関わろうとしても、子どもは戸惑うだけです。
主導権は母親のまま、動かさない方がいいでしょう。

子どもをどう支援していくかは、母親に決めてもらいましょう。
父親は、その決断に従ってください。

夫が決断してくれないとイライラする母親もいます。
そんな時はここを見せて、「お前が決めてくれ、俺は従うから」と言いましょう。

「妻に従う」は「妻に任せる」ではない

働かない子どもに悩む家族

「母親の決断に従ってください」

こう言うと、妻に任せたからと関わらなくなる父親がいます。
母親の決断に、文句は言っていない。
それでも、同意していない気持ちがあれば、子どもに伝わります

同じように、無関心も伝わってしまいます
きちんと母親の決断した内容を聞いて、協力してください。

母親の決断に同意していると、子どもに示してください。
言葉で色々伝えようとしても、急にはうまくいかないかも知れません。

「金は出すが、口は出さない」

このスタンスでも十分です。
両親が一枚岩になって、自分に迫ってくる。逃げ道はない。
そう思わせないと、子どもは動きません

65歳以上の父親は、仕事中心の言葉しか持っていない

引きこもりから脱して喜ぶ父

父親が主導権を持つべきではない理由が、もう一つあります。
この世代は、仕事中心の思考で子どもに向かってしまうのです。

「好きな仕事を」
「やりがいのある仕事を」

多くの父親が言っている言葉だと思います。
ですがこれは、仕事で未来を切り開かせようする、仕事中心の考えです。

今の日本は、やりがいにつながるような就職は新卒時に集中しています。
一度いわゆる勝ち組ルートから外れると、戻るのは難しいのが実情です。

子どもたちは、仕事には自分の幸せはないと思っています。
ですが父親は、仕事中心の人生の幸せの言葉しか持っていません。

今の時代に引きこもるわが子への答えを、持っていないのです。
それでも親の言葉を聞いた子どもは、そうしなければいけないのかと思います。

ありもしないゴールを探し、時間が過ぎていきます。
仕事中心の父親の言葉は、子どもの引きこもりをこじらせてしまうのです。

母子密着なら、嫌われ役になってでも引き離そう

母子密着を考える父

母親に従ってくださいと言いましたが、注意しなければならないことがあります。
母親と子どもが、母子密着になっていないかです。

次のうちがどちらかが当てはまるなら、母子密着と考えてください。

  • 母親が何も具体的な対策を取っていない。
  • 支援を受けるなど、やっていることはあるが、2年間変化がない。

母子密着になると、子どもに離れてほしくない気持ちが無意識に働きます。
すると母親は子どもを外に押し出す決断をせず、支援を入れようとしません。

いつまでも状況が変わらず、引きこもりが長期化していきます。
どんなにいい支援も、万人に効果があるわけではありません
2年間状況に変化が無ければ、違う支援にするべきです。

そう伝えても支援を変えないなら、外に押し出せない、母子密着の母親になります。

働き始めて喜ぶ父親

母子密着といっても、仲がいいばかりではありません。
わが子の家庭内暴力に苦しむ母親でも、例外ではありません。
支援を入れない、変えないのであれば、母子密着と判断すべきです。

母子密着と判断したら、母子を引き離す必要があります。
密着した母子に介入するのですから、もちろん嫌がられます。

子どもの引きこもりを何とかしたいなら、嫌われ役を引き受けてください。
これは父親にしかできないことです。

母子を引き離したら、第三者による支援につなげてください。
父親が子どもへの答えを持っていないのは、すでにお伝えした通りです。

父親自身が支援するのではなく、第三者に任せましょう


65歳未満の父親がすべきこと

65歳未満の父親は、夫婦で話し合って決断する

話し合う家族

次は、65歳未満の父親の場合です。
共働きも多く、普段から父親も家庭に関わっています。
様々なことを夫婦で話し合い決断してきた世代です。

子どもへの支援についても、夫婦で話し合って決めてください
子どもへも、夫婦で対応するようにしましょう。

65歳以上は母親主導ですので、大きく違います。
大切なのは、これまで通りであることです。

主導権の急な移動はしないでおきましょう。
夫婦で決めた決断を、夫婦が声をそろえて子どもに伝える。

このやり方で子どもを動かせたケースは、多くあります。

ただ「働け」はダメ、具体的なスモールステップを示そう

引きこもりに悩む家族

子どもと話す時は、やるべき方向をはっきり伝えましょう。
子どもにも分かる、具体的な提案をしましょう。

よくあるダメな声かけは、「働け」です。

働くまでには、情報を調べる、ハローワークへ行く、履歴書を書く、面接の練習をするなど、たくさんの段階を踏まなければなりません。

大量のやるべきことが浮かび、子どもは結局何もできません。
引きこもった現在の子どもができるくらいの、スモールステップを提案してください。

ステップひとつひとつにきっちりと期限をもうけて、具体的に動かすようにします。
期限までにできなかったらどうするかも、ちゃんと決めましょう。

そして次のステップを提案する、を繰り返すのです。

65歳未満の父親の落とし穴は、「自主性尊重」

ニートに悩む父親

子どもに自主的に動いてほしい。
子どもが納得してから支援を入れたい。

そう考えている父親はこの世代にたくさんいます。

この「自主性尊重」が、65歳未満の父親が子どもを動かせない最大の原因です。
自主性を尊重するあまり、子どもに強く「こうしなさい」と言えないのです。

子ども自身も引きこもりから脱出した経験はありません。
目の前の壁をどうやって超えるのか、子どもも分かっていません

加えて、引きこもって1年もすると、引きこもりの心と体になっていきます。
変化を避ける決断になりますし、いい決断をしても体が動いてくれません。

ステップに期限をもうける話をしました。
期限内に動けないことが数回続くなら、「自主性尊重」では動かないと判断しましょう。

子どもの引きこもり解決に必要だと思うことを、夫婦で話し合って決めましょう。
自主性や、本人が納得しているかは関係ありません。

「親として、こうします」ときちんと子どもに押し付けてください。
淡い期待で子どもの自主性を待っていると、引きこもりが長期化していきます。
子どもの未来のために、親が決断し、実行してください。


すべての父親がすべきこと

父親だけでやろうとせず、母親をきちんと巻き込む

引きこもり支援を受ける親

ここからは世代に関係なく、父親が注意すべきことをお伝えします。

65歳以上の父親は母親の決断に従う。
65歳未満の父親は夫婦で話し合う。

このように、子どもを動かすには母親の存在が不可欠です。
父親だけで子どものことを決めようとしても、うまくいきません。

どんなに父親が子どもに現実を突きつける話をしても、父親がいない間に母親が甘やかせば、見事に意味がなくなってしまいます。
子どもへの影響力は、父親は母親に勝てないのです。

子どもに関する決断は、父親だけでしないこと。
必ず母親を巻き込むようにしてください。

両親が揃って子どもに向かうのが一番です。

第2の母親にならない

引きこもりを解決した父

子どもに関わりたがる、心配性の父親が最近増えました。
まるで第2の母親です。

第2の母親になってはいけません。
「父親」としての影響力を失ってしまうからです。

母親が子どもを動かしきれないとき。
必要なのは第2の母親ではなく、「父親」です。
母親とは違う存在感が、子どもを動かす助けになります。

父親と母親は、子どもを押し出す方向は意見を合わせておくべきです。
でも子どもへのアプローチ方法は、違っていていいのです。

子どもに語りかける母親の背後に黙って立つ。
大事な時には、お金を出す。

例えばこれだけでも、子どもにとっては影響力があります。
実際に社会で働き、大黒柱として家庭を支えてきた父親にしか、言えない言葉があります。

現実から逃げる子どもの前にきちんと立ちふさがり、前へ押し出すのは、父親のほうが向いています。

母親にも、自分と同じ関わり方を夫に求めないで欲しいと思います。

第2の母親にならず、「父親」でいる。
そう意識しながら、子どもに対応してください。

親子仲も夫婦仲も、解決には関係ない

ランニングする家族

子どもの引きこもりを解決する。
そのためにまず親子で会話できるようにならなければ、と考えていませんか。

実際は、仲がいいからこそ動かせないケースもあります。
仲がいい場合と悪い場合、どちらにも、すべきことがちゃんとあります。
大切なのは仲がいいかどうかではなく、すべきことができるかです。

夫婦仲も、いい必要はありません。
子どもに関する意見が合ってさえいれば、子どもは動かせます

離婚話が出ていながら、子どもを動かした例もあります。
その夫婦は、「子どもを家から出すほうがいい」という方針は一致していました。

もちろん親子仲や夫婦仲がいいのに越したことはありません。
ただ、子どもの引きこもりを解決できるかどうかは、全く関係がないのです。
ですから、関係の改善のために努力する必要はありません。

子どもの時間は、どんどん過ぎて行ってしまいます。
子どもを動かすためにすべきことを、まっすぐやればいいのです。


まとめ

子どもが引きこもっていたら、どうすればいいのか。
父親がすべきことをお伝えします。

65歳以上の父親がすべきこと

ヒントを見つけて喜ぶ父

子どもをどう支援していくかは母親が決めし、父親はその決断に従いましょう。

この世代は「男は仕事、女は家庭」で、子どもへの関わりは母親が中心でした。
急に父親が子どもに関わろうとしても、子どもは戸惑ってしまいます。

母親の決断に文句は言わないが、実は同意していない、または無関心。
これは「従う」ではなくて、「任せる」です。

両親が一枚岩になって自分に迫ってくると思わせないと、子どもは動きません
母親の決断した内容をきちんと聞き、同意している姿勢を子どもに見せてください。

この世代の父親は、仕事中心の思考を持っています。
今の日本では、引きこもりの子どもが仕事で幸せを見つけるのは、難しいのが実情です。
仕事中心の言葉は、ありもしないゴールを子どもに探させることになります。

父親は子どもの幸せへの答えを持っていないので、やはり母親が主導権を持つべきです。

次のうちがどちらかが当てはまるなら、母子密着の状態です。

  • 母親が何も具体的な対策を取っていない。
  • 支援を受けるなど、やっていることはあるが、2年間変化がない。

母子密着になると、母親は子どもを外に押し出せず、引きこもりが長期化していきます。
母子密着だと判断したら、父親が嫌われ役になってでも母子を離すしかありません。

母子を離した後は、第三者による支援につなげてください。

65歳未満の父親がすべきこと

子どもが自立した親

65歳未満の父親は、夫婦で話し合って今後を決めてください。
普段から父親も家庭に関わってきた世代ですので、これまで通りにします。

夫婦で決めた決断を、夫婦が声をそろえて子どもに伝えましょう。
子どもへは、具体的な、現在の子どもでもできるスモールステップを提案します。

ただ「働け」と言っても、やることは大量にあり、子どもは結局何もできません。
ステップには期限を設け、できなかったらどうするかも決めておきます。

「自主性尊重」が、子どもを動かせない最大の原因です。
子ども自身も実は、どうすれば引きこもりから脱出できるのかわかっていません。

引きこもって1年もすると、心も体も動きにくくなっていきます。
自主性に任せると、引きこもりが長期化していくのです。

ステップを期限内にクリアできないことが数回続いたら、自主性尊重をやめましょう。
子どもの引きこもり解決に必要だと思うことを、夫婦で話し合って決めます。

本人が納得しなくても、その決断をきちんと子どもに押し付けましょう。

すべての父親がすべきこと

父親ができることをする

子どもを動かすには母親の存在が不可欠です。

父親だけでやろうとせず、必ず母親を巻き込むようにしてください。
両親が揃って子どもに向かうのが一番です。

最近はまるで母親のような、心配性の父親が増えました。
第2の母親にならず、「父親」でいる意識を持ってください。
「父親」にしか言えない言葉や、できないことがあるのです。

親子仲や夫婦仲が悪くても、できることはちゃんとあります
関係改善のために努力する間にも、子どもの時間は過ぎていきます。

子どもの引きこもり解決のためにすべきことを、まっすぐやりましょう。

ニュースタート事務局スタッフ 久世

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執筆者 : 久世 芽亜里(くぜ めあり)

久世芽亜里

認定NPO法人ニュースタート事務局スタッフ。青山学院大学理工学部卒。担当はホームページや講演会などの広報業務。ブログやメルマガといった外部に発信する文章を書いている。また個別相談などの支援前の相談業務も担当し、年に100件の親御さんの来所相談を受ける。

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