子どもに、殴られる。
蹴られる。
家や物を壊される。
暴言を吐かれる。
引きこもる子どもからの、暴力。
親にとっては、つらい地獄の日々ですよね。
引きこもりやニートの子どもを抱える親のうち、約2割が暴力をふるわれています。
最初から暴力をふるうような子どもではなかったと思います。
学校ではどちらかと言えばおとなしいタイプ。
ふつうの、いいご家庭で育っています。
「ふつうの家庭」の「ふつうの子ども」が、親に暴力をふるうのです。
長引くと、暴力はどんどんひどくなる傾向があります。
最初は物を壊すだけだったのが、ある日から親を直接殴りだします。
暴力は終わりがなかなか来ず、10年暴力が続いているケースもあります。
暴力は止まっているけど、いつ再開するかとびくびくしている。
子どもが怖くて、子どもの言うことを聞いてしまう。
そんな過去の暴力の影響で何もできない方にも、あてはまる方法です。
3つのステップで、家庭内暴力から脱出しましょう!
家庭内暴力が起こったら、最初にするべきは「休戦」です。
いきなりすべてを解決しようとしてはいけません。
暴力のおさまる「休戦」状態を、いかに作り出すか。
それには、親子が離れることです。
物理的に離れてしまえば、暴力をふるわれることはありません。
家庭の中で、暴力が出ないように、はれ物に触るような対応をするのは違います。
これは「冷戦」状態で、「休戦」ではありません。
「冷戦」とは、ちゃんとしたコミュニケーションがない状態です。
世間話程度はできたとしても、子どもの未来についての話など一切できません。
親として言うべきことはわかっているのに、
「子どもに暴力をふるわれないように」
「刺激しないように」
ということを優先してしまって、口に出せません。
「冷戦」の最中、子どもの中では、暴力のマグマがどんどん溜まっていっています。
このマグマは、いつか爆発します。
ほとんどの家庭で、「冷戦」の時期を通ったのち、暴力が始まります。
「冷戦」は、安全な状況ではないのです。
「休戦」するには、次の5つの方法があります。
1〜4ではすべて、親子が別々に暮らします。
これがやはり一番効果的です。
5は、家の中に他者がいつもいることで、家の空気が変わり、暴力を抑えます。
大切なのは、親も子もいったんお互いに離れて、別々の世界で生きてみるということです。
息苦しい、危険を伴う、家庭という密室から抜け出してみましょう。
一人になる子どもが心配なあまり、遠くに離れられない親がいます。
特に5つの方法の中では、1の「子どもに一人暮らし」を選びがちです。
その親がよくする失敗が、家の近所に住ませてしまうことです。
2の「子どもを家に残して親が出る」でも、家の近くのアパートに親が住もうとします。
これでは、暴力から離れられません。
子どもが頻繁に親の所へ通って、暴力をふるいます。
子どもの家に親を呼びつけて暴力をふるうこともあります。
距離が近いと、子どもの中の親への依存心、甘えを断ち切れません。
顔を見ようにも簡単に見ることができない距離が必要です。
子どもの近くにいようとする大きな理由は、子どもが心配だからです。
子どもの様子を見てくれる第三者がいれば、親が近くにいる必要はありません。
5つの方法のうち3~5は、第三者が分かりやすく関わっています。
1の一人暮らしや、2の子どもを家に残す場合でも、生活を助ける人が必要です。
食事や、家の中がどうなっているか、病気をしていないかなど、親は心配が尽きません。
ですがその様子を見るのは、第三者に任せてください。
どの方法を選ぶにしろ、第三者の存在が不可欠なのです。
子どものことは第三者にお願いし、親は子どもと離れなければなりません。
きちんと「休戦」しなければ、暴力から脱出することができないのです。
親と離れると、半分の子どもは、これ幸いと自分のペースで生活し始めます。
ですが残りの半分は、親を取り戻そうと、いつもと違う言動を始めます。
電話や手紙で、ごめんなさい帰ってきてと訴えます。
「死んでやる」と脅してくることもあります。
ですがここで戻っても、また暴力が始まるだけです。
親はぐっとこらえて、子どもと会わないようにしましょう。
ここで根負けして、家に戻ってしまう親もいます。
支援をしてもうまくいかないケースの多くは、このパターンです。
3つのステップ全てが終わるまで、子どもと距離を保たなければなりません。
親子のやりとりは、第三者を通じての手紙くらいで十分です。
1年間一度も会わない。
そのくらいの覚悟が必要なのです。
休戦によって、暴力自体は表面的には解決します。
次は根本的な解決に向けたステップです。
そもそも、なぜ親に暴力をふるうのでしょうか。
そんな感情が家庭という密室で煮詰まり、ある日突然爆発するのです。
自己嫌悪が強いタイプ、親への恨みが強いタイプなど、いろいろいます。
共通する根本的な原因は、「自分の未来が見えないことへの不安」です。
未来に進みたい。
でも真っ暗闇の中、どこへ向かって足を踏み出せばいいのかわからない。
そんな状態で、子どもたちは引きこもっているのです。
引きこもり、家庭内暴力の子どもに限らず、今の若者はあらゆる体験が不足しています。
これらはすべて、体験不足によるものです。
このような狭い視野で自分の未来を探しても、なかなか見つかりません。
まずは体験不足を補う必要があります。
補う体験は、大きく分けて次の3つです。
多様な人、生き方に触れる機会を作ります。
人と話すような会に参加する。
誰かの話を聞きに行くのもいいでしょう。
寮などで多くの人と暮らしていると、自然と人間体験ができます。
「人間関係は今でも苦手だけど、人間が嫌いじゃなくなりました」
支援する中で実際に聞いた言葉ですが、これが人間体験の目指すところです。
実際に体を動かし、働く体験を継続的にします。
農業体験でも、知り合いの職場で手伝いをさせてもらうのでもかまいません。
「雇用」ではなく、あくまで「体験」として受け入れてもらいましょう。
朝起きて、働き、夜寝るという生活サイクルを作りましょう。
引きこもって動かない体と心に、力を取り戻す作業です。
「学校」と「家庭」しか知らない若者たちに、いろんな社会があると知ってもらいます。
海外旅行で異文化に触れる、四国お遍路に行くなど、旅行も社会体験のひとつです。
地域のイベントも、地域社会に触れる経験になります。
ボランティアに参加するのもいいですね。
企業での体験も、会社という社会を体験できます。
働いた経験がある人にとっても、他の会社を知る機会は大切です。
あの会社で嫌な思いをしたけれど、そうじゃない会社もあるのではと思ってもらえます。
多くの社会を体験させて、多様さを感じられるようにしましょう。
子どもを体験に連れ出さなくてはならない。
でも、子どもが自分から積極的に参加していくことは考えにくい。
親は「休戦」で離れているので、関わることができない。
誰か第三者に、多様な体験の場に連れ出してもらう必要があります。
「休戦」中に様子を見てくれている人でも、別の人でもかまいません。
体験する先の人に連れに来てもらうのもいいと思います。
支援機関に滞在していると、体験先を持っていたり、様々な会を開催しているところがありますので、体験につなぐのは比較的スムーズだと思います。
一人暮らしを始めてすぐ、焦ってバイトをしようとする人がいます。
でも、たいていはうまくいきません。
すぐ文句をブツブツ言ったり、他人のささいな一言にすぐ傷ついてしまいます。
暴力をふるう子どもは、多くが完璧主義者です。
完璧でない自分を許せません。
理想が高すぎるために、一人では何ともできず、親にあたる状況です。
いろんな人や社会を知ること、完璧でなくても幸せな生き方を知ることで、
「これくらいでいいんだ」
「これでいいんだ」
と思えるようになります。
親はこのステップ2にこそ、お金と時間をつぎ込むべきです。
親の人脈や知識を使って、多様な体験先を見つけましょう。
お金をかけて様々な体験をさせ、子どもの視野が広がるまでゆっくり待ちましょう。
子どもの視野が広がって、価値観がほぐれたら、やっと次のステップに進めるのです。
将来に関わる具体的な行動をするステップです。
アルバイトも、この段階です。
不登校だったなら、学校に戻るのもひとつです。
大切なのは、「これから自分はどうしたいのか」「何をしていくのか」を、漠然とでもいいから、自分で決めることです。
自分で決めて、とにかく自分の足で歩いてみる、ということが大切です。
そうやって歩き始めても、いきなり未来が見えてくるわけではありません。
ですが、未来を探し始めた、という手ごたえを子どもは実感していきます。
引きこもっていた子どもにとっては、ひとつひとつの経験が未知のものです。
働いた経験があっても、空白期間のある経歴でやっていかなくてはなりません。
自分で決めた道でも、実際に進んでいくのは大変です。
こんなひとつひとつが、大きなハードルになります。
彼らのそばにいてアドバイスをする、第三者が必要なのです。
それは仕事を始めてからも同じです。
職場でのあれこれも、初めてのことばかり。
以前の仕事での失敗をくりかえさないためにすべきことは。
人間関係の心配もあります。
せっかく仕事についたのに、いつのまにか会社を辞めて、再び引きこもる子どもも少なくありません。
決断は子ども本人がする。
だけど具体的な行動は、アドバイスや手助けをする第三者が必要です。
自分の道さがしで、忘れてはならない大切なことがあります。
「正社員の道を捨てる」ということです。
たとえ暴力がなくなっても、長く引きこもっていた子どもが正社員の職を見つけることは、ほとんど不可能に近いと思います。
もし正社員になれたとしても、勤め続けるには様々な難関があります。
正社員を目指す限り、うまくその道に乗れず、行き詰まってしまうのです。
特に親は、正社員をきっぱり諦める必要があります。
でなければ、子どもの決断や行動を、快く認めてあげることができません。
子どもがアルバイトを始めたとしても、
「ずっとこのままでいいわけない」
「次は正社員に」
という、無言の圧力をかけてしまいます。
この無言の圧力に、子どもはとても敏感です。
「まだ自分はだめだ」と自分を責めてしまうかもしれない。
終わりなく上を求め続ける親に、不満を感じるかもしれない。
これは暴力をふるう子どもの気持ちと同じです。
働きながら暴力があるケースや、アルバイトを辞めて正社員を目指してもうまくいかず、また引きこもって暴力が再開しまうことも多々あります。
せっかく働くところまで進んだのに、親の視線ひとつで、ふりだしに戻ってしまうのです。
せっかく子どもが自分で歩き出した道を、親が支配してはいけません。
子どもは自分の道を自分で探し、自分で歩かなければならないのです。
自分で決めた道を、自分の足で歩き続ける。
そうしているうちに、だんだんと自分の未来が見えるようになってきます。
この先どうしたいか聞くと、答えが返ってくるようになります。
「1年はこのバイトを続けようと思います」
「自分の力で、一人暮らしできるようになりたいです」
その頃になると、子どもはもう暴力をふるうことはありません。
「家庭内暴力からの脱出」の完了です。
ほとんどの子どもは、この段階まで来ると、親に会って報告をしたがります。
やはり子どもが一番自分を認めてほしいのは、何と言っても親なのです。
「第三者の」という言葉が、ずっと出てきたと思います。
ステップ1では、生活の面倒を見てくれる人。
ステップ2では、体験に連れ出してくれる人。
ステップ3では、アドバイスをしてくれる人。
どのステップでも、第三者の存在は欠かせません。
暴力がある場合、親がすべきことは、
このふたつだけです。
ですが、他者に自分の子どもをお願いするのは、気が引けるのでしょう。
誰にも助けを求めないまま、長く暴力を受けている親がたくさんいます。
親の義務だからと、子どもを手放しません。
親が直接子どもに何かをしようとしても、暴力を受けるだけです。
親以外の、他者に任せるしかないのです。
親が子どもを第三者にお願いすること。
これが最初の一歩であり、最大の一歩です。
第三者は、支援機関やカウンセラーでもいいですし、親戚や友人でもかまいません。
一人でも、ステップによって違う人になってもいい。
「信頼のおける他人」であれば、だれでもいいのです。
たった1時間、たった1回の相談だけで事態が好転することはまずありません。
根気よく何回も相談に乗ってくれて、実際に子どもを連れ出してくれる人でなくてはなりません。
これはボランティアで出来るほど、簡単なことではありません。
多くの時間と労力を使います。
たとえ兄弟親戚であっても、お金を払うべきです。
そのくらいシビアに考えないと、「家庭内暴力からの脱出」はうまくいきません。
第三者に任せようと言うと、病院に連れて行こうとする親が少なからずいます。
引きこもり、暴力の大半は、原因は病気や障害ではありません。
長く引きこもっていれば、病気のようになるのは当たり前です。
未来が見えないことが原因ですから、薬で治すことはできません。
逆に、親に病気や障害を疑われる子どもの気持ちを、想像してみてください。
親子関係がさらにこじれる可能性が高くなります。
病気の治療が必要な子どもや、障害の子どもも、中にはいます。
ですがそれは、ステップが進む中で行き詰まった時に、初めて考えればいいことです。
その時はすでに、受診を勧めサポートしてくれる第三者がいるはずです。
第三者に病院を選ぶことは、絶対に避けてください。
3つのステップで、家庭内暴力から脱出することができます。
親子が物理的に離れれば、暴力はふるえません。
これが「休戦」です。
暴力が出ないようにとはれ物に触るような対応をするのは、「冷戦」であって「休戦」ではありません。
「冷戦」の最中は、いつ爆発するかわからない暴力のマグマが、子どもの中にどんどん溜まっていっています。
「休戦」するには、次の5つの方法があります。
大切なのは、親も子もいったんお互いに離れて、別々の世界で生きてみるということです。
別々に暮らしても、互いの家が近いと、「休戦」できません。
子どもが頻繁に親のところへ来て、暴力をふるう可能性があります。
5つのどの方法を選ぶとしても、生活の面倒を見る第三者が必ず必要です。
子どもの様子を見るのは、第三者に任せましょう。
親と離れると、子どもは親を取り戻そうといろんな言動をします。
ここで戻っても、また暴力が始まるだけです。
親はぐっとこらえて、全てのステップが終わるまで、距離を保ってください。
暴力の根本的な原因は、「自分の未来が見えないことへの不安」です。
その不安が自分や親への苛立ちや焦りになり、家庭という密室で感情が煮詰まり、暴力となるのです。
引きこもっていると、あらゆる体験が不足しています。
少ない体験から得た狭い視野で自分の未来を探しても、なかなか見つかりません。
次の3つの体験をして、体験不足を補いましょう。
子どもが自ら体験の場に参加していくことは考えにくいでしょう。
子どもを連れ出してくれる、第三者が必要です。
一人暮らしをしていきなりバイトをしようとしても、うまくいきません。
多様な生き方や社会を知り、子どもの視野が広がってからです。
親はこのステップ2にこそ、お金と時間をつぎ込むべきです。
実際に仕事を始めたり、進学に向けて準備をするなど、具体的な行動をします。
大切なのは、「これからどうしたいのか」を子どもが自分で決めることです。
自分で決めて、とにかく自分の足で歩いてみることで、未来に向かっている手ごたえを実感していきます。
就職活動ひとつとっても、引きこもっていた子どもは未経験のことが多くあります。
仕事を始めても初めてのことばかりで、ハードルがたくさんあります。
アドバイスや手助けをする、第三者が必要です。
正社員の道は、きっぱり諦めてください。
正社員になるのは引きこもっていた子どもには難しく、目指すと行き詰まってしまいます。
親の頭に正社員があると、バイトを始めても「次は正社員」という無言の圧力をかけてしまいます。
その圧力で、また引きこもって暴力が再開する可能性があります。
自分で決めた道を、自分の足で歩き続けるうちに、自分の未来が見えてきます。
その頃には、子どもはもう暴力をふるうことはありません。
「家庭内暴力からの脱出」の完了です。
3つのステップ全てに、第三者の存在が必要です。
暴力がある場合、親がすべきことはこのふたつだけです。
第三者は、「信頼のおける他人」であれば、だれでもかまいません。
根気よく何回も相談に乗ってくれて、実際に子どもを連れ出してくれる人でなくてはなりません。
多くの時間と労力を使いますので、たとえ兄弟親戚であっても、お金を払うべきです。
第三者に病院を選んではいけません。
引きこもりや暴力の大半は、原因は病気や障害ではなく、「未来が見えないこと」です。
親に病気や障害を疑われることで、親子関係がさらにこじれてしまいます。
暴力がある場合は、まず親は第三者を見つけて、子どものことをお願いしましょう。
自分は子どもから離れましょう。
第三者の関わりのもとで、「休戦」「多様な体験」「自分の道さがし」の3つのステップを踏ませます。
すると、家庭内暴力から脱出できるのです。
ニュースタート事務局スタッフ 久世
同じ引きこもり・ニート状態であっても、その状況はそのご家族によってみな違います。
ニュースタート事務局では、ニート・引きこもりの解決のために、あなたの息子さん・娘さんに最もよいと思われる方法を、豊富な経験からご提案いたします。
認定NPO法人ニュースタート事務局スタッフ。青山学院大学理工学部卒。担当はホームページや講演会などの広報業務。ブログやメルマガといった外部に発信する文章を書いている。また個別相談などの支援前の相談業務も担当し、年に100件の親御さんの来所相談を受ける。
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