引きこもり、ニートの子ども。
親として将来は心配だけれど、今は波風の立たない日々を送っていませんか?
将来のために子どもを動かすには、今の状況を変えなければなりません。
それは、今の平穏な日常を壊す、ということでもあります。
目の前の平穏を守ろうとすると、わが子の引きこもりやニートが長期化してしまいます。
その理由、そして親としてどうすればいいのか、説明していきます。
目次
子どもが引きこもっている。
子どもがニートである。
親にとっては、心配な事態です。
でも日々は大きな波もなく、過ぎていきます。
一見、安定した平穏な日常です。
このままではいけない。
子どもの将来が心配。
でも、子どもと将来や仕事について話そうとすると、日常とは違う空気になります。
「嫌な顔をされるから」
「すっと自室に戻ってしまうから」
「文句を言われるから」
「暴力が出るから」
それを気にして、言い出せない、行動できない、という親が多くいます。
暴力や暴言が出ない、一緒に食事にできる、話ができる。
そんな日々を守りたい。
そう思うのは、親として当たり前の気持ちです。
ただそれで、引きこもり・ニートの解決につながるでしょうか。
平穏な日常を過ごす子どもの引きこもり・ニートを解決するために必要な、最初のこと。
それは、親が過保護をやめることです。
動かない子どもに手を貸すのは大切です。
でも、やりすぎていませんか?
働いていないから、必要だから、小遣いをあげる。
やらないから、子どもの部屋を掃除する。
食べに来ないから、放っておくと食べないから、食事を部屋まで運ぶ。
過保護はやめた方がいいと分かっているけれど、心配でついやってしまう。
もう過保護が染みついてしまって、どこまでが過保護なのか分からなくなっている。
またはその自覚もないまま過保護になっている親もいます。
親はついつい過保護になり、先に手を回してしまいがちです。
それでは物事に直面して自分で考え動くという、大切なことからも子どもを遠ざけてしまいます。
親が過保護をやめることで、子どもを動かしましょう。
親が過保護をやめると、子どもは不自由を感じ、困ることで、本来自分が向かうべきだった問題に立ち返ります。
不自由を何とかしようとして、やっと動きだすのです。
ですが困った子どもは当然、穏やかな気持ちではいられません。
イライラして親に当たることもあります。
口をきかなくなる、自室から出てこなくなることもあります。
こうして日々の平穏は変わってしまうことがあります。
ですがそこを通過してやっと、子どもが本来の問題を見つめるようになるのです。
本人が嫌がり、平穏ではなくなってしまうかもしれない。
そんな大変ことをしなくても何とかならないのか、と思う親は少なくありません。
「本人がOKするような提案はないか」
「もっとスムーズにうまくいくような方法はないか」
と言われますが、そんなものはありません。
私たちニュースタートは、引きこもり・ニートの子どもを訪問して外へ動かす、という支援を行っています。
訪問する中で、過保護だと感じた部分を具体的に親にお話しし、止めるようお願いすることがあります。
ですが、本人が嫌がることを心配して、実行できない親がいます。
すると、子どもは家庭が逃げ場になってしまい、こちらが訪問していろいろ誘いかけても動こうとしません。
いつまでも平行線のまま、時間が過ぎていってしまいます。
私たちが外からどんなに働きかけても、内側で親が反対の動きをすれば、子どもに届かない。
親が本気で子どもを動かすように働きかけなければ、解決に向かわないのです。
子どもを動かすためにはどんな声かけをすればいいのか、というお問い合わせも、よくいただきます。
ですが、そんな魔法のような言葉もありません。
実際に私たちが支援してきたご家庭のうち、親子の対話で解決しました、というケースはほぼゼロです。
対話で解決できる家庭は、そこまで長引かせずに解決しているのでしょう。
親がニュースタートの寮に子どもを入れると決断して、手続きも済ませたとたん、本人が働き始めたことがあります。
これが一番スムーズにいったケースでしょう。
親が具体的に行動する中で、その本気さが子どもに伝わり、本人が動きだしたのです。
言葉だけで何とかならないか。
子どもが嫌がらないやり方で何とかならないか。
日常の平穏を守りながら何とかならないか。
このような弱い気持ちでは、引きこもり・ニートの子どもを動かすことはできません。
親が本気になって初めて、子どもに伝わるのです。
親が守ろうとする波風の立たない日々とは、平穏と呼べるのでしょうか。
それは平穏ではなく「こう着」ではないか、と一度考えてみてください。
平穏とこう着の大きな違いは、変化や世界の広がりがあるかどうかです。
家庭内に変化があるわけでもなく、子どもが外の世界で変化するようなつながりもなければ、こう着と言えるでしょう。
特に子どもの引きこもり・ニート状態が1年以上続いているのであれば、こう着している可能性が高くなります。
引きこもり・ニートになって1年もたつと、子どもの動く力や判断力が下がり、自力では解決できなくなります。
そこからは、親やそれ以外の働きかけが必要です。
1年を過ぎたのちも親がうまく働きかけられず、家庭に目立った変化がないなら、こう着している、と考えた方がいいでしょう。
まずは今の状況は平穏なのかこう着なのか、きちんと見極めてください。
こう着であったなら、まず家庭のこう着を崩すべきです。
いつまでも日々の平穏を優先することは、こう着を続けることです。
問題を先送りするのと同じです。
そうして、引きこもり・ニートは長期化していきます。
本人が望まないことをする。
「それで信頼関係が崩れるのではないか、親子関係が悪くなるのではないか」と心配する親は、たくさんいます。
その答えは、「変わりません」です。
私たちニュースタートは、20年以上こういった支援活動をしてきました。
卒業から10年、20年を過ぎた親子と話す機会もよくあります。
卒業生の多くは、私たちが介入することで、家庭内の平穏が崩れる時期を経験した人たちです。
寮に来てからも、入寮させた親への文句をさんざん言っていた人もいます。
そんな彼らが、卒業して長い時間が経過した今、どんな親子関係になっているでしょうか。
ここに最初に相談が来た時と変わらない、という印象なのです。
もともと会話をしていた親子は、子どもが落ち着けば、元通り会話するようになります。
ずっと口をきかなかった子どもは、何年も仕事が続いて生活できていても、やはり親には口をきかないままです。
支援を依頼してくる時点で、親子関係はすでに出来上がっているのでしょう。
こちらが介入したことにより、急激に親子関係が良くなった、悪くなった、というケースは、覚えがありません。
親が働きかけることで、一時的に家庭の中は荒れることはありますが、引きこもり・ニートといった問題が解決してしまえば、元に戻るのです。
何もしなければ、引きこもり・ニートが長引き、家庭の中は変わらない、または暴力が始まるなど悪化する場合もあります。
そうでなくても、引きこもり・ニート期間が長いほど、解決にも時間がかかります。
ほんの一時のことで変わるほど、親子関係とは浅いものではありません。
ですから、「関係が悪くなるのでは」という心配は、必要ないのです。
それより、引きこもり・ニートが長引くことで増えていくデメリットを考えていただければ、と思います。
平穏を崩しても親子関係は変わらない、というお話をしました。
ここでもうひとつ、知っておいていただきたいことがあります。
親子関係によって問題解決ができるか、ということです。
「親子が仲良くなければ、子どもを動かせない」
「だからまずは、親子関係を良くしないと、話ができるようにならないと」
そう考える親は、たくさんいます。
親子関係の良好さ。
子どもが未来に向けて動くこと。
実はこのふたつに、関係性はありません。
どんなに仲が良くても、子どもが先へ動かないこともあります。
親子の仲が悪く何年も口を利かないまま、きちんと働いて自活していることもあります。
仲が良くても悪くても、押し出すべき方向に押し出せば、本人は動きだすのです。
ですから、家庭内が平穏であるかどうかも、本人が動きだすかどうかとは関係ありません。
一生懸命、平穏な日々を追いかける必要はないのです。
家庭の平穏さは、子どもを動かす助けにはなりません。
それどころか、こう着になってしまえば、マイナスにさえなってしまいます。
目の前の平穏さにとらわれず、子どもの将来のためになることをしてください。
平穏な日常を壊してでも、子どもを動かす行動をしなければ、問題は解決に向かいません。
では、具体的にはどんな行動をしたらいいのでしょうか。
これは、ひとつの答えに決めることができません。
私たちも家族や本人の状況、これまでの流れを見て、個々に考えるようにしています。
親が自分で考えると、「これまでのパターン」から抜け出せず、いつもと少し変えただけの行動になりがちです。
こちらの提案に、予想外だと驚く親は珍しくありません。
親の考えに、「それは逆効果です」とお話しすることもあります。
こう着した家庭の中にいる人には、こう着から抜け出す行動はなかなか思いつきません。
どんな行動を取るかは、ぜひ第三者の意見を聞いてください。
親戚や友人に相談するか、私たちのような支援機関を利用してください。
家庭の問題を家庭内で解決することは難しいのです。
外からの視点を、ぜひ取り入れてください。
平穏な日常を壊したくない。
波風の立たない今日、明日を過ごしたい。
だから大胆な言動ができない。
親はなぜ、そんな気持ちになるのでしょうか。
家庭が平穏で、よく理解しあってこそ、子どもが動くのだと思ってはいないでしょうか。
「子どもが目を合わせてくれなくなった」という理由で、訪問の終了を告げてきた親がいます。
極端な例ですが、これでは平穏は保てても、問題は解決しません。
ぎりぎりの平穏を保とうとする努力は、子どもの引きこもり・ニートを長引かせます。
「あの時は親を恨んだけど、押し出してもらってよかったと今は思います」
卒業生が、後になってこう話してくれます。
家庭が平穏ではなくなることは、親としてはつらいでしょう。
ですが、言うべきことは言い、やるべきことはやるしかありません。
優先すべきは、子どもの引きこもり・ニートという問題の解決です。
親の本気の決断、行動に、すべてがかかっています。
子どもが引きこもり・ニートになっている。
将来が心配だけれど、今は波風の立たない平穏な日常を送っている。
そんな状況のまま、時間が過ぎて行っていませんか。
問題解決のためには、親が過保護をやめることが大切です。
親が手を出さなくなり、不自由を感じ、何とかしたいと思って、やっと子どもは動き始めるのです。
そうする中で、子どもの態度が変わり、日々の平穏が崩れることもあります。
言葉だけ、本人が嫌がらないようなことをするだけでは、子どもに届きません。
親の問題解決に向かう本気の行動が、子どもを動かします。
そもそも、今の波風の立たない日々は平穏ではなく、「こう着」かも知れません。
引きこもり・ニート状態が1年以上続いているなら、こう着の可能性が高くなります。
こう着した家庭の中では子どもは動かないので、こう着を崩しましょう。
親子関係が悪くならないかが心配で、行動できない親もいます。
でも実際は、引きこもり・ニートから脱して落ち着くと、元の関係に戻ります。
良くも悪くもなりません。
親子関係の良さや家庭の平穏さと、問題解決できるかは、関係ありません。
大切なのは、押すべきところへ押し出せるかどうかです。
実際にどんな行動を取るかは、第三者の意見を聞くようにしてください。
こう着した家庭の中にいると、そこから抜け出すような発想はなかなか出てきません。
家庭が平穏でなければ、子どもが動かないと思っていませんか。
ぎりぎりの平穏を保とうとする努力は、引きこもり・ニートを長引かせます。
目の前の平穏な日々にこだわるのはやめましょう。
子どもが未来へ動くことが、一番大切です。
平穏を壊すことを恐れず、やるべき行動を取ってください。
ニュースタート事務局スタッフ 久世
同じ引きこもり・ニート状態であっても、その状況はそのご家族によってみな違います。
ニュースタート事務局では、ニート・引きこもりの解決のために、あなたの息子さん・娘さんに最もよいと思われる方法を、豊富な経験からご提案いたします。
認定NPO法人ニュースタート事務局スタッフ。青山学院大学理工学部卒。担当はホームページや講演会などの広報業務。ブログやメルマガといった外部に発信する文章を書いている。また個別相談などの支援前の相談業務も担当し、年に100件の親御さんの来所相談を受ける。
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