ニート状態のお子さんのことで悩み、親ができることを探していらっしゃることでしょう。ニートから脱出するには、ニートのことや、また具体的な支援方法を知っておく必要があります。
ただ、親御さん世代との価値観の違いを知ろうとしなかったり、現状維持となってしまう対応を続けてしまったりすると、いつまでも抜け出せずに悪循環となるのも実情です。
そこでこのコラムでは、「ニートから脱出する方法」をテーマに、自立への考え方から親御さんができる支援まで紹介します。
現状維持をやめて新たなアプローチをしたい、ニートからの脱出を目指したい、そんな時に参考にできる内容ですので、ぜひ最後までご一読ください。
目次
まずは前提として、この記事でニートからの脱出をどう考えるかをお伝えしておきます。
ニートからの脱出は一般的には、就労できている・働いている状態と考えられています。就学や復学もニートからの脱出のひとつですが、今回は仕事に関する内容に限定します。
ただし継続的に働けていても、親御さんが金銭援助をしなければならない状態なら、まだ「半ニート」くらいではないでしょうか。
やはり望ましいのは、いわゆる「自立できた状態」です。
ニートからの脱出を「正社員で働いていること」と考える方もいらっしゃいますが、正社員をゴールにすると、どうしてもハードルが高くなってしまうのでお勧めしません。
それよりも大切なのは、「親元を離れ、自分で考えて、自らの道を歩き出した状態」かどうかです。
ニートは定義があいまいなため、それ以外にも色々な考え方はあるでしょうが、この記事では「ニートから脱出=自立」とし、そこに向けて何ができるのかをご説明していきます。ぜひ最後までご一読ください。
なお、ニートの定義のあいまいさや、ニートと引きこもりの違いについては、以下の記事でまとめています。お子さんがニートではなく引きこもりではないかと思われたら、併せてご覧くださいませ。
【関連記事】引きこもりやニートを脱却するには?定義や原因よりも早めの相談が解決のカギ
まず、ニートから抜け出せないときに陥る結果について考えてみましょう。
お子さんがニートから抜け出せない場合、以下の結果にぶつかる可能性があります。
お子さんがニートからなかなか脱出できないと、「履歴書の空白期間」が長くなりますから、就職への難易度が高くなります。
空白期間は一般的に問題視されますし、色々と説明をしても疑念が残りがちです。
特に対人関係が苦手な人は、説明もうまくできません。人とあまり接しない期間が長引くと、会話もどんどん下手になるのが普通です。就職へのハードルもそれにともなって高まるでしょう。
ニートではなかった場合でも、就職の難易度が高まっている業界ではなおさらですから、空白期間が長引くことにはデメリットしかありません。
お子さんがニートから脱出できないと、親御さんの負担は徐々に増加します。
大半のケースでは親御さんがニート状態のお子さんの生活費を出している、養っているわけです。
例えば、最初は少しの間だけと思って渡していたお金も、何年もするとなかなかの金額になりますし、いつの間にか月々の要求額が増える場合もあります。
お子さんにできる親御さんからのサポートには限界があります。
親世代の負担増加は、ニートのお子さんとの関係にも悪影響を与える可能性がありますから、結果としてさらなる悪循環を招きます。
お子さんがニートから脱出しないまま生活を続けると、国でも問題視されている8050問題(80代の親が50代の子どもの面倒を見ること)に直面します。
年金生活になれば、これまで得ていた収入よりも下がってしまい、生活が困窮することもあるでしょう。
さらに、人間の寿命は伸び続けていますから、より発展した9060問題になることも少なくありません。
8050問題になると、親御さんも体力的にもお子さんを支えることが大変になります。
現在の時点で問題なく生活できても、10年・20年と時が過ぎればそれだけ状況も変わりますから、動き出すのは体力があるときがタイミングともいえます。
さらに年齢を重ねると、ニートを脱出しないままのお子さんが一人で残される状況を作り出してしまいます。
8050よりも若い年齢であっても、親御さんが突然のトラブルに見舞われて、お子さんが一人になることもあり得ます。
頼る人がなくなれば動き出すケースがある一方で、ご兄弟に負担が行くケースや、亡くなった親御さんを放置してニュースになるようなケースがあることも確かです。
ニート状態のままいつか抜け出してくれるだろうと見守り続けていても、改善に進む確証は全くありません。調査により20年30年の引きこもりの存在ははっきりしており、お子さんが20年30年ニートのままの可能性もあるわけです。
少しでも早くニート状態からの脱出、自立を目指すこと、そのために親御さんが適切な対応をすることがやはり重要になります。
お子さんがニートから脱出する前にしておきたい代表的な準備を、以下の2つに分けて紹介します。
就労に向けては母親の支援も必要でありながらも、父親の役割がより大切になりますので、ぜひ参考にしてください。
ニートのお子さんに対して、母親ができる準備は以下が挙げられます。
お子さんと母親の関係性として、以下の特徴がある場合はニートや引きこもりを長期化するリスクがあります。
より具体的に、母親ができることをまとめた記事がありますので、ぜひ併せてご覧ください。
引きこもりを対象としていますが、ニートでも同様に共通するものがあります。
【関連記事】引きこもりに母親ができること|関わり方や支援を解説
ニートのお子さんに対して、父親ができる準備は以下が挙げられます。
母親にできない父親だからこそできることが、そこにあります。
しかし、「価値観の押し付け」「無関心で過ごす」「第二の母親になる(母親と同じ役割をする)」といった態度でお子さんに向かうのは逆効果です。
ニートの支援には父親の関係性が重要ですから、以下のような態度は避けてお子さんと向き合いましょう。
より具体的に、父親ができることをまとめた記事がありますので、ぜひ併せてご覧ください。
引きこもりを対象としていますが、ニートでも同様に共通するものがあります。
【関連記事】引きこもりの子どもと父親の関係|役割と対応方法を徹底解説
お子さんがニートから抜け出すために、自らできる方法は以下が挙げられます。
お子さんがニートから抜け出すために、ボランティアやアルバイト(短時間や週1~2回)からはじめましょう。
アルバイトは、1日数時間のものや、週に1~2日、短い有期雇用や、日雇いのものなどがお勧めです。
働く経験から、役立ち感に加えて成功体験を積み、自分に自信を持ってもらうことが大切です。
また、将来を考えられない際には、働きを通してこれからを考えるきっかけとなります。
上記のような方法で仕事を探し、親御さんはそれを後押しする支援を続けます。
【関連記事】ニートが就職する方法と受けられる支援|引きこもりとの関連性まで解説
ニートから抜け出すために、資格の取得を目指して学校に通うのも一つの方法です。
専門学校や大学、特定のスキルを得られる講座を利用し、就職に必要な知識・スキルを磨き、アピールポイントとします。
なりたい職業があればその関連した資格を目指しやすく、働くよりもハードルを下げられることがあるでしょう。
ただし、学校や講座を受講する場合、経済的な問題の解決は必要不可欠ですから、どの程度までかかるのか、どうしたら良いのかなどは考えておきましょう。
ただし、お子さんが社会復帰から逃げるために、勉強を選択するのはよくありません。
20代ならまだ就職先も豊富で、これから新しいことを覚えていく段階です。
ですが、30代40代と年齢を重ねているのに就労経験が少ない場合は、資格を取っても社会経験の少なさで就職活動のハードルが上がります。
せっかく資格を取得しても会社側から評価されないといったこともありますから、第三者に客観的な意見を求めてから判断するといった形でも遅くはないでしょう。
ニートから脱出するために、第三者から支援を受けることも一つの選択肢です。
働く前段階としてボランティアや研修で経験を積めますし、適切な対応は何が良いのか一緒に考えてもらえます。
また、親御さんからの明確な支援が思いつかないときのよき相談相手として、そして行動を起こせないときの実行役としても頼れる存在です。
お子さんの自立には、親御さんから離れた環境で同じ境遇の仲間と過ごす経験をすることが、一つのきっかけになることもあります。
具体的な相談先は、サポステ・ジョブカフェ・NPO(ニュースタート含む)などがあります。
引きこもり・ニートを解決するために第三者の支援をご検討される場合は、ニュースタートへご相談ください。
若者の自立を支援しているニュースタート事務局には、サポステが併設され、寮生が気軽にプログラムを利用できる状態が整っています。
また、以下の支援を受けられることで、ニートから脱出し、自ら自立への道を歩きはじめられるのも利点です。
ニートからの脱出は多くのハードルがありますから、ボランティアや研修を活用し、少しずつ社会へとつなげる必要があります。
なお、支援が不要であればはっきりとそうお伝えしますので、無理やり連れ出すこともありません。
施設に来ることが難しければ、訪問支援も実施しています。
また支援が必要ない場合は、そのことをはっきりとお伝えしますので、お悩みでしたらまずはお気軽にお問い合わせください。
お子さんがニートから脱出する方法を以下の年代別に分けて、わかりやすく紹介します。
共通している結論として、親御さんとお子さんのどちらも正社員を目指す考え方を捨て、働くこと(最低限の生活を営めること)というハードルに切り替えます。
冒頭でお伝えしたとおり、「自立=正社員」だけが答えではありませんから、念頭に置いてそれぞれ参考にしてください。
また、いずれの場合も難しいと判断したり、具体的な対応が思いつかなかったりする場合は第三者へ相談を検討するのがおすすめです。
お子さんが20代でニート状態にある場合は、現在の状態に見切りをつけて、沼にハマるようにダラダラしないことが大切です。
原因を追求したくなる気持ちもわかりますが、まずは何があったのか、どう考えているのかをお子さんの価値観にあわせて行動に移します。
例えば、何かなりたいものがあるならキャリアプランを決めて後悔しないよう動き出す、動き出せないなら背中を押してあげるなどです。
よく、ニートや引きこもりの子どもは、以下のことで就職できずに悩むことがあります。
働いていない空白期間は、長くなるほどこうした気持ちを強くし、社会からのつながりを失います。
動き出せない理由があるなら、親御さんから背中をそっと押してあげることを忘れないようにしてください。
いきなり正社員が厳しい場合も想定し、アルバイトや短期のみ、ボランティアからでも構わないことは念頭に入れておきましょう。
【関連記事】20代の引きこもり割合や人数|手遅れになる前に適切な支援を検討しよう
すでに20代を過ぎてしまって、お子さんが30代でニート状態にある場合は、未経験でも可能な仕事やアルバイトなどから働くきっかけを作ります。
外に出る機会がない場合は、外出から少しずつ慣れていく段階的な支援も必要になるでしょう。
ただ、30代を超えたあたりから選べる仕事が減ってきますし、受けられる公的支援も限られてきます。
空白期間をうまくカバーできるように伝え方を工夫したり、20代と同様の対応を続けながら社会とつなげることを続けましょう。
【関連記事】30代の引きこもり解決に向けて!試せる支援はある?
お子さんが40代でニート状態にある場合は、一般的に就職できる仕事が限られ、採用率も下がり厳しくなります。
生活の維持に不安を抱えながらも、無理なく生活できるレベルから目指すように、未経験からOKの仕事やアルバイトからスタートしましょう。
また、不安なときにはボランティアから役立ち感を感じてもらい、少しずつ社会復帰を目指す必要があります。
これ以上の支援が難しいと判断したら、第三者の力を借りつつ徐々に自立への一歩を踏み出しましょう。
【関連記事】中高年引きこもり、原因・対策・40代は…全て解説します! 2022年最新版
最後に、ニートからの脱出で寄せられるよくある質問へ、まとめて回答します。
お子さんがニートを脱出した、という人がきっかけとなった事柄は、以下が挙げられます。
あくまでもこれらのきっかけは例ですが、十人十色というように、ニートのお子さんが抱えている原因に合わせて多種多様です。
ちょっとしたきっかけから、自立まで止まらずに動き出せることもありますから、まずは行動に移してその環境や気持ちへの変化へ働きかけてみましょう。
ニートを抜け出した後にお子さんが得られるものは、以下が挙げられます。
得られるものの多くが、ニートでは得られなかったものばかりですし、現在抱えている不安も自然に軽減できるものです。
ただ、すべてを一気に得られるものではなく、働けたから収入を得られて不安が軽減したなど、行動に伴う結果であることは否めません。
だからこそ、親御さんや依頼した第三者によってニートのお子さんの背中を押すといった、本人の気持ちを汲んだ支援を続ける必要があるでしょう。
お子さんがニートから脱出できない理由は、以下が挙げられます。
なかには、「そもそも働きたくない」「働く意味がわからない」といったこともありますし、人間関係・社会に対して何らかの恐怖心を抱いている可能性も捨てきれません。
こればかりは本人のみぞ知るところですが、その他にも親御さんが脱出できない理由となっていることがあります。
親御さんにとっては辛いことかもしれませんが、お子さんと正面から向き合わずに済む方法はありません。
対話ではなく行動に切り替えて、お子さんを動かすことに切り替えるためにも、以下の記事を併せてご覧ください。
【関連記事】引きこもり・ニートに親ができること「平穏な日常を捨てる?」
お子さんがニートになってしまう原因は、以下が挙げられます。
いずれも単体ではなく、複合的に絡み合って現在の状況を作り出します。
また、ニートの原因は追求するほど挙げられますし、個々人によっても多種多様であることから、追求することに疲れて現状維持となる可能性があるでしょう。
お子さんとまっすぐ向き合い、行動に移すことは忘れないようにしてください。
繰り返しとはなりますが、ニートの脱出は「自立=正社員雇用」という考え方を親御さんが捨てて、お子さんへ向けて支援という行動を繰り返すことです。
心配になって原因を突き止める気持ちがあっても、追求するばかりで行動しなければ現状維持ですし、事態は動き出しません。
そうすると、以下の一般的に挙げられている末路へ着実に近づいてしまうわけです。
これからに不安を感じたり、支援の方法が具体的に思いつかないときには、ぜひお気軽にご相談ください。
同じ引きこもり・ニート状態であっても、その状況はそのご家族によってみな違います。
ニュースタート事務局では、ニート・引きこもりの解決のために、あなたの息子さん・娘さんに最もよいと思われる方法を、豊富な経験からご提案いたします。
認定NPO法人ニュースタート事務局スタッフ。青山学院大学理工学部卒。担当はホームページや講演会などの広報業務。ブログやメルマガといった外部に発信する文章を書いている。また個別相談などの支援前の相談業務も担当し、年に100件の親御さんの来所相談を受ける。
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