「子どもはニートから就職できるのだろうか」
と気になりお調べですね。お子さんがニート状態で、今後を考えると不安な気持ちが押し寄せてくることかと思います。
「ニートからお子さんが脱出して就職する」と言葉にすると簡単ですが、実際には多くのハードルがあってそう上手くいきません。
また、親御さん世代と価値観が異なりますから、その働き方に加えて自立の内容も人それぞれです。
そこでこのコラムでは「ニートと就職」をテーマに、就職する方法・流れや受けられる支援を紹介します。
そもそも就職というのは、「自立」という目標を達成する一つの選択肢ですから、ニートのお子さんができることはまだ他にもあるはずです。
思い詰めている今の気持ちを整理し、他の方法や考え方を見つけるきっかけになるよう解説しますので、ぜひ最後までご一読ください。
目次
結論から言うと、ニートからの就職は多くのハードルがありますから、簡単なことではありません。
また、年齢を重ねるごとに就職先の幅は減ってしまいますし、何よりその前の時点から以下に挙げた困難・苦難を乗り越える必要があるからです。
なぜこのような困難・苦難があるのか、それぞれもう少し詳しく紹介します。
まず誰もが気になる問題は、ニートとして過ごした間の「空白期間(ブランク)」がどうなるかでしょう。
就職を目指した場合はまず、書類選考として履歴書・職務経歴書を作成します。
ニートの期間は書くことがなく空白となりますので、企業側に与える心象・印象が悪く、すでに「不利な状況から就職を目指す必要がある」という大きな苦難が待ち構えているわけです。
しかし、嘘を書いてしまうと経歴詐称となりますから、どうしたらよいのか困って手をつけられないという状態に陥ります。
したい仕事や働きたい企業があるかも、一つの不安材料として残ります。
年齢やスキルなどの条件があわずに希望する職種を見つけられないことは十分にあり得ますし、そもそも募集していなかったり、その要件に合わなかったりします。
また、ニートのお子さんがやってみたい職種が見つかっても、ブランクやこれまでに経験した困難などにより、就職の難易度が高まります。
ニートのお子さんが希望する仕事や働きたい企業を見つけて、履歴書を作って書類選考を無事に通過し、面接にたどり着いても他者を相手にうまく話せるかがハードルになります。
「ニートであることを責められてしまうのでは」「空白期間について詳しく聞かれるのでは」などの不安があるからです。
また、質問に対して適切に答えを求められる昨今では、コミュニケーションに苦手意識がある場合、どうしても思うように気持ちを伝えられないといったことも起きるでしょう。
ニートに限らず、コミュニケーションが苦手な人にとって面接は大きな苦難となりますので、空白期間を背負った状態だとさらに不利になると感じてしまうわけです。
ニートのお子さんが就職できたとしても、その業務をこなす自信を持っていない場合があります。
「教えてもらった仕事で失敗したらどうしよう」「うまく自分だけで対応できるだろうか」などの不安を、より強く感じる可能性があるからです。
また、これまで否定されたり、誰かの意見を聞くだけで過ごしてきたりする場合は、自らの意見を伝えられずに抱え込みやすいため、いつかはその気持ちに押しつぶされてしまって挫折します。
恐怖や不安が勝ってしまうとニートを選択し、また元通りの生活に逆戻りするといった可能性も捨てきれません。
ニートになる前の困難経験として、ブラック企業や職場内でのいじめを受けていた場合は、入社できても疑いの気持ちを持ったままとなります。
不自然な大量採用・離職率の高い求人などを避けても、相手が本当にブラックなのかは、入社前には見極めきれませんし、人によっての感じ方もそれぞれです。
困難な経験があったからこそ、そしてあり得ない話ではないからこそ、前向きになれない気持ちが就職をより遠ざけるといったことにもなりかねないわけです。
お子さんがニートとして過ごした期間が長いほど、年齢を重ねているため就職に影響が出るのも確かです。
一般的に、20代前後であれば未経験でもその吸収力の高さが評価され、今後を担うビジネスパーソンとして就職しやすい傾向があります。
しかし、30代を過ぎたあたりから即戦力としての能力・スキルを求められたり、管理・マネジメントを担える人材を探していることが多くあります。空白期間と年齢によって就活が厳しいものになるのは言うまでもありません。
こうした将来を担う若い人材が未経験者として求められる昨今では、30代を過ぎると就職難易度が高くなります。これが社会復帰の足かせとなってしまう可能性があります。
ニートのお子さんがそもそも働く気になれないというのも、一つのハードルとなります。
ニートのお子さんは、以下のようなタイプが珍しくありません。
こうした就職(仕事)に対する価値観の違いが、「働きたい」という気持ちを失わせてしまいます。
お子さんの世代は本当の貧困を知りませんし、援助するシステムがそろっていることで飢えて死ぬという強い焦りはありません。
また、モノが多くある時代で豊かに育っていますから、マイホームや車といった資産を持つことに「面倒」という気持ちすらあるでしょう。
さらには自分に自信がないため、そんな自分のために頑張る気持ちにはなれません。「これはあなたのためよ」「お前自身のことなんだから」と話しても、そんなお子さんには響きません。
「正社員になってほしい」「正社員になれば安定」という親の気持ちも、終身雇用が崩れた今の時代にそぐわないでしょう。
働く気になれないニートは、就職活動へも前向きになれませんし、現状で満足できるので多くを求めずにそのまま過ごすといった状況に陥りやすいわけです。
こうした考え方・価値観の違いについては、以下の記事にまとめているので参考にしてください。
【関連記事】引きこもりが社会へ出るために、親が知っておくべき2つのこと
お子さんがニート(いわゆる無業者)の状態で、さらに引きこもり(普段から他者との繋がりがない)状態となると、就職はより厳しさを増します。
簡単に説明すると、引きこもりとニートの違いは人間関係の有無にありますが、対象範囲の違い・区別の明確化は難しいのが実情です。
こうした定義は曖昧なものですから、はっきりとしている「就職が厳しくなって親世代への負担が増える」ということに目を向けましょう。
ニートで引きこもりという状態が続けば、8050問題や生活の困窮、親世代がいなくなってからの将来的な生活苦は目に見えるはずです。
だからこそ、「ニートだから・引きこもりだから」という現状の理由や原因を探すことに力を注ぐのではなく、明確にこれからどのように改善するか、具体的には何をするべきなのかを考える必要があります。
なお、ニートと引きこもりの定義の曖昧さは、以下の記事でまとめたので気になる方はぜひあわせてご覧ください。
【関連記事】引きこもりやニートを脱却するには?定義や原因よりも早めの相談が解決のカギ
ニート状態にあるお子さんが受けられる代表的な就職支援サービスは、以下のとおりです。
就職支援サービス | 内容 |
---|---|
就職エージェント | 求人紹介や面接対策など |
求人サイト | 求人検索や応募など |
公的支援サービス (サポステ・ジョブカフェなど) | 就労に必要なサポートや職場体験など |
第三者機関・NPO | ボランティアや職場体験・入寮・訪問支援など |
ハローワーク | 職業紹介や雇用対策など |
生活困窮者自立支援 | 生活保護の前の困窮対策など |
就労移行支援(障がい者向け) | 知識やスキル向上のサポートなど |
ニートや引きこもりのお子さんにおすすめなのは、就労支援と呼ばれる「仕事探しにとりかかること・その前段階の準備」についてサポートを受けることです。
就職活動する手前の段階から、就職活動そのもの、就職してから継続できる状態になるまで、様々な支援があります。
社会へ継続的に参加する力を身につけるために、ぜひ利用を考えましょう。
【関連記事】引きこもり・ニートで就労支援は受けられる?仕事探しの解決策とは
若者の自立を支援しているニュースタートの事務所にはサポステが併設されており、寮生が気軽にプログラムを利用できますし、他にも以下の支援を受けられます。
長く引きこもり状態だった方には、企業での研修ではなく、ニュースタートが運営する店舗での研修から始めるのがおすすめです。施設に来ることもまだ難しい場合は、訪問支援もあります。
ご相談をいただいた際に、支援が不要であればそうお伝えしますので、ニートのお子さんの就職支援を検討した際には、ぜひご相談ください。
ニートから就職しやすい職種(仕事)は、以下のものが挙げられます。
ニートや引きこもりのお子さんが社会復帰を目指す場合、コミュニケーション能力があまり必要でない職種は候補に入れましょう。面接でうまく話せなくても受かる可能性が高いですし、お子さん本人にとってもハードルが低いはずです。
また、警備員や配達員などは体力づくりと並行できますし、未経験でも採用されやすい職種でしょう。
さらにはクラウドソーシングを活用したWebサービスなど、在宅でもできる仕事もあります。
ニート(引きこもりを含む)から就職しやすい職種(仕事)については、以下の記事で詳しくまとめたので参考にしてください。
【関連記事】引きこもり経験があっても仕事はできる?探し方やおすすめの職種
ニートのお子さんが就職する方法と、基本的な流れは以下のとおりです。
まず、ニートから就職を目指す場合は年齢や職歴不問の求人を探してみましょう。働いていない、いわゆる空白期間(ブランク)が不利になりにくいためです。
求人は正社員に限らず、アルバイトやパートといった短い時間から働けるものも視野に入れます。
大切なのはいきなり「正社員という安定した仕事を見つける」のではなく、「働く経験を積む・自立のきっかけを得る」ことです。
週に1〜2回で、短時間という条件でも構いませんから、無理のない求人を探してみましょう。
この段階でも困難を感じた場合は、ボランティアや職業体験といった支援サービスも検討してください。
段階を踏まずに背伸びして就職してしまうと、長続きせず、結局ニート(または引きこもり)へ逆戻りしてしまうかも知れません。
ニートのお子さんがトライできそうな求人を見つけたら、どんな環境かを確認するようにしましょう。
まずは働きやすい環境であるかを確認しておくと、働き続けやすくなるはずです。
そして可能であればスキルや実績を積める環境かを考えます。
もちろん必須ではありませんが、これからのキャリア形成のために、スキルや実績を積める場であれば、将来よりよい転職を考えることができます。
こういった仕事をやりたい、この職種に就職したいという明確な意志があれば、その仕事につながるような求人かもポイントです。
いざ働き始めると色々あるものですが、今の仕事が未来にどうつながるかを考えておくと、「1年だけはこの仕事を続けてみよう」といった気持ちになれるかも知れません。
更なるステップアップを目指す場合、どのように成果を上げるかを考えておくのも大切です。
スキルや実績を身に付けても、正確にアピールできなければ今後の就職に活用できません。目指す職業があるなら、その道筋も立てる必要があります。
ある程度先のことまで考えて成果を積み上げておくと、次のステップが見えやすくなり、自信にもつながります。
ニートに限らず、引きこもりの社会復帰でいきなり働くのは辛いケースがよくあります。
その際には、自信をつけたり、経験を積んだりするためにも、サポステやボランティア」で、働く経験を積むというのも一つの方法です。
一言にニートから脱出し、社会復帰を目指すとしても、解決に至るまでの道が多くあります。
段階を踏んで徐々にステップを踏み、無理なく就労を継続できる状態を整えるには何が必要かを考えてみるのもよいでしょう。
ニート(引きこもり含む)の社会復帰については、以下の記事でまとめているので参考にしてください。
【関連記事】
引きこもりから社会復帰する方法とは?脱出のきっかけを支援で掴もう
引きこもり・ニートの社会復帰が難しいと言われる3つの理由|最初に試したい脱出のススメ
ここで親御さんに知っておいてもらいたいのが、就職と自立との関係性です。
自立(社会復帰)は「達成すべき目標」で、就職は「目的(自立)を達成する手段」、自立に向かう一本道に就職があると一般的に考えられているはずです。
ただし、「就職=自立」ではありません。
特に「正社員として雇用されなければ、月〇万くらい稼がなければ自立できない」と考えていると、自立のハードルは高くなりますし、ブランクのあるお子さんにかかる負担も相当なものになります。
そもそも自立の意味は、「他への従属から離れて独り立ちすること。他からの支配や助力を受けずに、存在すること」です。
まずは親の助けなく、親から離れて独り立ちすることです。
家賃が安い部屋に住み、生活費を押さえれば、アルバイトでも、週5日働かなくても、十分自立はできます。会社に雇用されなくても、稼ぐ手段は今は色々とあります。
逆に言えば、たとえ正社員として働いていても、実家に住んで親御さんが食事を作るなど家事の手助けをしていれば、自立とは呼べません。
自立と就職は関連性が高いですが、就職ばかりに目をやるのではなく、お子さんに合わせた自立の在り方を考えて行動してみましょう。
具体的にどんな行動をすればいいかは、以下の記事でまとめています。気になった方はぜひ参考にしてください。
【関連記事】引きこもり状態からどうしたらいい?自立すべき理由と対策を解説
最後に、ニートと就職に関する以下のよくある質問に回答しますので、ぜひ参考にしてください。
ニートから自立をするには、型通りの就職をする必要はありません。
たとえば、ニュースタートで開催したニート祭りに出演していただいた「山奥ニート葉梨はじめさん」が暮らす共生舎は、月2万円で食費など基本的な生活すべてをまかなうことができます。
近年は共生舎以外でもシェアハウスが全国に増え、5万円程度で住めるところも少なくありません。
同じニート祭りの出演者である大原扁理さんは、年収90万で自分の望む生活ができると知り、働くのは週2日のみ、週休5日という生活をしていました。
お子さんが自分のしたい生活や生き方をイメージし、自力でかなえることができれば、それは自立と呼べます。その生活に納得をして、必要最低限の働き方にすれば、そこまでストレスもかからないでしょう。
お子さんが自由に自分の道を考えられるように、親御さんも視野を広く持つようにしてください。
※ニート祭りの様子は以下で閲覧できます。
ニートのお子さんへ何をしたらいいのか悩んだときには、以下の方法を試してみてください。
大切なのは、母親である自分ひとりで責任をもたなければならないといった形で、思いつめないこと。
臨機応変に柔軟な対応で、お子さんのニート状態を改善できるきっかけが見つかることもあります。
詳しくは、以下の記事でまとめているので参考にしてください。
【関連記事】引きこもりに母親ができること|関わり方や支援を解説
30代無職(ニート)の割合は、総務省統計局の労働力調査(2021年)によると、2.3%でした。
25〜34歳までは30万人、35〜44歳までは36万人ですから、おおよそ30万人前後が30代の無職(ニート)に該当すると考えられます。
この調査対象の総数は「4,016万人」ですから、ほんの一握りといえます。
しかし、対象となる人口は2011年の「4,685万人」から徐々に減少傾向にあるなかで、その割合は2.2%(2021年)の水準と変わっていないことを加味すると、常に一定数は存在している(または増加)の傾向があると考えられますので、人ごとではないでしょう。
「ニートの職歴なしは、何歳までなら許される?」という質問がありますが、実際には何歳まであっても問題ありません。
ただ、空白期間が長いほど就職への難易度が高まりますから、短いに越したことはないでしょう。
実際に、ニュースタートでは以下のように10年以上が経過したニートのお子さんが、無事に社会復帰を果たした事例があります。
職歴なしであっても、その働きぶりを見てもらったり、これから経験を積んでキャリアを形成したりはできますので、素早く動き出しましょう。
ニートから就職を目指す場合、以下の困難・苦難を乗り越える必要が出てきてしまいます。
ただ就職をゴールに設定してしまうと、お子さんの行動を妨げる場合があります。
大切なのは、就職ではなく自立です。自立の方法は、個人個人に合わせて柔軟に考えるようにしましょう。
ニートのお子さんが自立や就職を目指すとき、何をしたらいいのか悩んだときはニュースタートへご相談ください。
寮や訪問などの支援により、およそ9割の方が就労できています。また事務所にはサポステが併設されており、寮生が気軽に就職のためのプログラムを利用できます。
誰かの意見を聞くだけでも新しい風を取り込むきっかけとなりますので、ぜひご連絡をお待ちしております。
同じ引きこもり・ニート状態であっても、その状況はそのご家族によってみな違います。
ニュースタート事務局では、ニート・引きこもりの解決のために、あなたの息子さん・娘さんに最もよいと思われる方法を、豊富な経験からご提案いたします。
認定NPO法人ニュースタート事務局スタッフ。青山学院大学理工学部卒。担当はホームページや講演会などの広報業務。ブログやメルマガといった外部に発信する文章を書いている。また個別相談などの支援前の相談業務も担当し、年に100件の親御さんの来所相談を受ける。
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