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去る6月5日、富山市にある自治労とやま会館にて、引きこもりに関する講演をさせていただきました。
主催は富山県地方自治研究センター。大きな会場でした。
引きこもりに限らず、社会に関する様々な講演を行っているようです。
コロナの影響で、定員は約半数と思われる40人に絞っておられましたが、
引きこもりへの関心の高さからか、会場は満員で新たな希望者はお断りしている状況とのことでした。
講演会のタイトルは、「『信じて待つ』をやめる」。
通常の私たちが主催の講演会でお伝えすることと、内容はほぼ同じです。
子どもがいつか動き出すと「信じて何年も待ち続ける」のではなく、親が子どもの動く力を信じて「背中を押す」ことが大切だということ。
そうして自立していった事例がたくさんあること。
それをお伝えするためには、やはり、自立した元当事者のインタビュー映像を伝わるものが大きいので流したい。
しかし、私たちの講演会に遠方から来られた方と内容が被らないようにしたい。
そんな思いから、昨年秋の講演会で使用した親御さんと卒業生のインタビュー映像を流しました。
いずれも、長い引きこもりから抜け出し、今は自立して働いている事例です。
他にもスライドを使い、支援が成功した2つの事例をお話ししました。
会場の皆さんは熱心に見入っておられた印象です。
解決した事例の、しかも親と子の両方の言葉が聞ける機会は、めったにないと思います。
講演の後は、質疑応答の時間です。
事前に、参加者40人の半分が支援者など、半分が親御さんと聞いていました。
質疑応答の時間に、マイクを持って全員の前で行う質問は、ほぼ支援者。
講演後に、直接質問して来られたのは、親御さんでした。人前では聞きづらいからでしょう。
傾向がはっきり出ていますね。
親御さんたちからの質問は、こちらが関東で主催する際の質問と、大きく変わらないものでした。
うちの子はこういう状況なんですが……
〜といった困った状況なのですが、どうしたらいいでしょうか?
支援は可能ですか?
といった内容です。
それぞれの親御さんのご事情を伺い、具体的にできることをお答えしました。
その場で簡単に伺っただけですが、私たちにとってはどれも比較的難しくない、いざ支援すれば何とかなりそうだと思える方ばかりでした。
そしてふだんはあまりない、支援者からの質問が、かなり印象的でした。
訪問支援の具体的なやり方について
聞きたいのですが…
50代の当事者の方への対応で困っていて…
男性のところに、女性が一人で訪問して
大丈夫でしょうか?
◯◯◯がうまくいっていないので、△△△を使った支援をしようと考えていますが、
どうでしょうか?
一見普通にも聞こえる内容なのですが、質問の言葉の端々から「ひきこもり支援が成功した事例をあまり持っておられないのでは?」と感じました。
支援の成功事例が少ないのでは?と思った理由の1つ目は、ご質問の多くが「目に見えるテクニック」寄りで、そのベースとなる「根幹の考え方」がどこまで確立されているかを疑問に思ったこと。
私たちニュースタートのレンタルお姉さん・お兄さんは、ただご自宅を訪問するだけではありません。
一緒に遊びに行く、変わったことや、新しいことをやってみる、など「訪問」という言葉一つでは括れない支援だといえます。
ただそこには、その手法を取るはっきりとした理由が、特に明文化はされていませんが、レンタルお姉さん・お兄さんの共通認識としてあります。
そしてニュースタート自体の根底の考え方とマッチしているからこそ、その手法が功を奏します。
ある支援者の方からのご質問でこういうものがありました。
〜といった、他にはない変わった訪問をしているから、支援がうまくいくのでしょうか?
他に、どのような特殊なテクニックがあるか、教えてもらえませんか?
レンタルお姉さん・お兄さんがやっていることが異色に見えたかもしれませんが、トリッキーな部分だけを真似しても、同じ結果は出ないでしょう。
ですが、そのトリッキーさに飛びついてしまうほどの支援の手詰まり感があるのだ、という印象を持ちました。
これは質問から受けた私の単なる印象なので、実情と違っていたら申し訳ありません。
そして、「支援の成功事例が少ないのでは?」と思った理由の2つ目は、質問の最後の方に出た、
10年も引きこもっていた人が、
たった2年の支援で自立するなんて、信じられない!
といったニュアンスの言葉です。
「見えている景色が違う」と瞬間的に思いました。
私も含めニュースタートのスタッフたちは、「たいていの人が何とかなる、自立もできる」という感覚を持っています。
実際、7~9割の人が何とかなっているからです。
その感覚があるからこそ、外に向けて強く引っ張る・押し出すこともでき、更に結果につながるという構図なのでしょう。
今回の講演会で「困っています」と相談を受けた事例の大半は、1時間もお話を聞けば、その方の自立への支援の道筋が描けると感じました。
そして実際、少なくとも半数以上は、支援をすれば自立に至るだろうと思います。
今回の講演会も、自分達で主催する講演会も、全ての講演会でお話しする大きなテーマは、「『信じて待つ』をやめる」です。
信じて待つをやめてどうするかという回答として、「信じて背中を押し続ける」という言葉もお話ししています。
私たちは引きこもりの彼らの本来持つ力を信じられている、だから親御さんにも「信じて背中を押して」と言えているのだ、と今回気付きました。
支援の成功体験を持たない支援者の方々が、
どうすれば引きこもりの人たちの力を信じることができるのか?
これについては、この日の質疑応答ではまともにお答えすることができませんでしたし、今も明確な回答は見つかりません。
講演会としては一定の成功はしたのではないかと思うと同時に、新たな課題も見つかった日でした。
今回の講演をご依頼くださった富山県地方自治研究センター様、本当にありがとうございました。
今すぐに思いつくことは、私たちの支援の成功体験を伝えていく程度しかありません。
私たちから発信すると同時に、こういった講演のご依頼があればお受けしますので、ご希望があればご連絡ください。
成功体験が動きを軽くし、次の成功体験につながる。
これは引きこもる当人も支援者も、同じなのかも知れません。
同じ引きこもり・ニート状態であっても、その状況はそのご家族によってみな違います。
ニュースタート事務局では、ニート・引きこもりの解決のために、あなたの息子さん・娘さんに最もよいと思われる方法を、豊富な経験からご提案いたします。
認定NPO法人ニュースタート事務局スタッフ。青山学院大学理工学部卒。担当はホームページや講演会などの広報業務。ブログやメルマガといった外部に発信する文章を書いている。また個別相談などの支援前の相談業務も担当し、年に100件の親御さんの来所相談を受ける。
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