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ニート・引きこもりとサラリーマンの「社会力」

2019年1月21日

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定年サラリーマンの「社会力」

 


前にも書きましたが、地元の名門私立中・高一貫校を卒業した同級生で、地元に戻らずに東京や大阪の大企業に就職した友人たちは、みんな、そこそこ出世しました。

 

 

 

平均年収が1000万円台で、大都市の郊外に一戸建てマイホームを持ち、二人ぐらいの子どもを育ててきました。

 

経済は右肩上がりで終身雇用の時代でしたから、そういう人生が可能だったのです。

 

 

 

また彼らは、核家族主義を普及させた最初の世代でもあります。

 

 

 

彼らは、戦後の大家族に生まれ、絶対的な権限を持つ父親を頂点とした、家父長制度への幻滅を感じて育ちました。

 

だから彼らは、親子が横並びのニュー・ファミリーをめざしたのです。

 

それはいま述べた母子による「友達親子」にもつながっていきます。

 

 

 

しかし、皮肉な現象が起きています。

 

 

 

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団塊の世代をふくむ60歳代前半から50歳後半の世代が、いままさに家族内に引きこもりやニートの問題を抱えているのです。

 

あるいは、パラサイト・シングルの子どもたちと同居していたりするのです。

 

 

 

すなわち、引きこもりやニート、パラサイト・シングルを批判するのも、そういう若者を家族に抱え込んでいるのも、似た世代の親たちだったりするのです。

 

 

 

その一方で、人に迷惑をかけず、人生に目的を持ち、自立して生きてきたはずの父親たちの多くは、定年まで会社組織の中だけで生きてきました。

 

 

 

だから定年後、それぞれが核家族として暮らす地域に戻っても、行き場がない。

 

友だちもいません。

 

会社人間にとって、自宅はただ寝に帰るだけの場所でしかなかったから、当然の帰結です。

 

 

 

私の同級生たちを見回してみても、60歳を超えて続々と定年退職し、第二の人生に突入していますが、自分なりに生きがいを持って、楽しく生きているのは10人に1人くらいのものです。

 

定年になった男性たちは、みんな呆然としています。

 

 

 

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私の同級生で、防衛大学校を卒業して自衛隊に入って、退官前は数千人の部下を持つ地位まで上りつめた男がいます。

 

 

 

彼は、全国の自衛隊駐屯地を転々とする人生でした。

 

そのせいで地域のネットワークなんて皆無です。

 

定年後は自衛隊の紹介で、保険会社の顧問をしているそうですが、週一回出勤するだけで暇を持て余していて、三日に一度は同級会のメーリングリストに何かしらのメールを書いて送っているらしいのです。

 

 

 

そういう行き場のない定年組が集まって、それまで年一回だった同級会が、いつの間にか毎月開催になってしまいました。

 

そんな同級会は気味が悪いので、私は一度も参加したことがありません。

 

どうせ話題は、地元での昔話か、社会への不平不満しかないわけです。

 

 

 

しかし考えてみたら、そんな彼らも会社組織の中ではヒエラルキーを利用し、上意下達で物事を動かしていたわけです。

 

ですから人間関係を築く力や、個人の社会力がなくても、そこそこやっていけるわけです。

 

 

 

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 社会力とは社会のルールを守り、人間関係を築き、主張すべきところは主張し、妥協すべきは妥協して、物事をすすめていく能力のことです。

 

 

 

ただ、企業内では部長が課長に、あるいは課長が係長に「これをやれ」と言っておけば、とりあえず誰かが動いてくれる。

 

会社組織とは実は個々の社員に社会力がなくても、そのヒエラルキーを活用して事足りてしまう世界なのです。

 

 

 

そういう組織の行動習性が長年しみついた人間が、定年後に地域社会に戻っても、まともな人間関係をゼロから築けるわけがありません。

 

地域社会では、昔の名刺は通用しませんし、昔の会社の話ばかりしすぎると、友だちの一人さえできないかもしれません。

 

 

 

つまり、皮肉なことに、定年退職したサラリーマンも、ニートの若者たちも、社会力のなさという点では案外、大差ないのかもしれないのです。

 

 

>>次回

 

 

 

 

 

「希望のニート」二神能基著 2005年6月2日刊行 より

 


 

 

このテキストは株式会社東洋経済新報社(以下「出版社」という)から刊行されている書籍「希望のニート」について、出版社から特別に許諾を得て公開しているものです。本書籍の全部または一部を出版社の許諾なく利用することは、法律により禁じられています。

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