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ニート・引きこもり、母子密着による悪化

2018年6月25日

母子密着という悪循環

 

 

それでも現実問題として、まだまだ日本では、母親の愛情が子どもを健全に育てるという考え方が根強くあります。

 

だから、私たちのところのような第三者機関に、子どもを預けることへの抵抗感もかなり強い。

 

お母さん自身も「私は母親失格だ」と考えてしまいがちです。

 

 

 

古いタイプのカウンセラーの中には、子どもが生き方に迷うと、お母さんの愛情で立て直すしかない、という論法で説得する人がいます。

 

今後、お母さんはパートも全部やめて、子どもの問題に専念しなさい、というわけです。

 

 

 

しかし子どもから見れば、自分がニートや引きこもりの状態に停滞していることで、親に迷惑をかけていることは当然わかっています。

 

 

 

そこで、さらに母親が自分に専念されたら、それは逆にものすごいストレスになります。 

 

お母さんが子どもに専念することが、子ども本人にとっては強いプレッシャーになるわけです。

 

子どもにすれば、息苦しくてたまらない。

 

 

 

そのために最近は、ニート問題などで相談を受けている若いカウンセラーの中にも、

 

 

 

「まずご両親自身がそれぞれの人生を楽しんでください。

 

子どもの心配をするあまり、ずっと家にいるのはよくありません。

 

パート仕事に出たり、何か趣味でも持ったりしたほうが、結果としてお子さんもうまくいきますよ」

 

 

 

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そうアドバイスする人が増えているようです。

 

 

 


 

 

 

 

ニートが長期化すると、子どもに専念する母子関係が、他人を寄せつけない強烈な依存関係になってしまうケースが多くあります。

 

一般にはそれは「母子密着が強い」とも言われます。

 

 

 

「母親の自分がなんとかして子どもを助けないと」

 

 

 

お母さんがそうがんばればがんばるほど、事態は悪化していきます。

 

かわいそうな子どもと、かわいそうな母親――母子が自分たちを「悲劇のヒロイン」にしてしまうのです。

 

 

 

ですから、私たちのところでは、強い母子密着を分断するために、子どもを寮に入れて母親と子どもをいったん引き離します。

 

 

 

しかしあまりにも密着度が強い場合には、子どもだけでなく、母親の抵抗も強い。

 

 

 

そういう場合は引き離すための準備期間として、母子一緒に寮に入ってもらいます。 

 

子どもは最初だけ個室、母親は女性スタッフと相部屋にして、一〜二週間様子をみるのです。

  

少し「慣らし運転」みたいな期間を設けることで、母子両方の不安感を和らげるのです。

 

 

 

それでも、子どもが深夜に母親の部屋を訪ねる、といったことがあります。

 

 

 

母親も引きこもりで苦しんでいる娘だということがあるからきちんと叱れず、「どうしたの?」と愛情いっぱいの眼差しで問いかけてしまう。

 

普通なら働く分別が働かない。

 

 

 

子どもも、母親が自分を受け入れることを確認したいから、わざと非常識な行動をとる。

 

突然体調の異変をおおげさに訴えたり、自殺の真似事までしてみせたりして、寮での生活を回避しようとします。

 

もちろん、そういう行動は子どもの側の演技にすぎません。

 

 

 

寮の基本は2~3ⅬⅮKの共同生活です。

 

知らない人たちと新たに共同生活をするより、いままでの個室の引きこもりの生活のほうが楽だから、そっちへ戻るために嘘をつくのです。

 

子どもの変調に母親も動揺してしまい、このままだと娘が死んでしまうと、無条件に娘の演技を受け入れ、母子で退寮されたケースもありました。

 

 

 

しかし一方で私が興味深いのは、そういう母親が四、五人集まると、不思議とほかの母子のことは、とても冷静かつ的確に見抜いていることです。

 

 

  

「あそこは母親が娘に甘すぎて、冷静な判断ができていない」

 

 

 

「息子も息子なりに苦しんでいても、注意すべきときは母親がきちんと注意しないとね」

 

 

 

そう端的に指摘したりします。

 

 

 

それなのに、ほかの母子を的確に見抜いた同じ母親が、自分の子どもとの関係になると、途端に客観性を失い、ただオロオロしてしまうのです。

 

 

 

 

「希望のニート」二神能基著 2005年6月2日刊行 より

 


 

 

このテキストは株式会社東洋経済新報社(以下「出版社」という)から刊行されている書籍「希望のニート」について、出版社から特別に許諾を得て公開しているものです。本書籍の全部または一部を出版社の許諾なく利用することは、法律により禁じられています。

 

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