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ニートは働く意欲のない甘えた若者か?

2017年10月31日

 

「働く意欲のない若者」論の誤解

 

 

ここまで、私が日々若者たちと接して感じた彼らの長所・短所について書いてきました。

 

それらをふまえたうえで、「ニートは働く意欲のない甘えた若者」という批判について書いてみたいと思います。

 



結論から言うと、「ニートは働く意欲のない甘えた若者」というのは誤解です。

 

正確に言うと、彼らは「働かない」のではなくて「働けない」のです。

 

 

 

「働けない」大きな原因になっているのが、まずは新卒の就職率の低さです。

 

 

「新卒 説明会  フリー素材 人物」の画像検索結果

 

 

私のところに来る若者は、学校中退か会社を退職しているのが大半です。

 

中退者の場合は、その時点でまともな就職を諦めてしまっています。

 

新卒でも正社員になるのが難しいわけですから、中退で引きこもり経験があれば到底不可能だと考える。

 

それはある意味、とても現実的な考え方なわけです。

 

 

 

最近、新卒採用で学歴不問という企業が増えてきたからといっても、高校や大学中退の人間は、特殊な才能でも持っていないかぎりは就職は難しいのが現状です。

 

 

 

会社を辞めて引きこもった場合も、似たようなものです。

  

会社を辞めてからの空白期間が長くなればなるほど、会社側の印象は悪くなります。

 

それに若者自身も、ふたたび働きはじめるきっかけがつかみにくくなります。

 

 

 

まず、そういう社会的な要因が第一にあります。

 

 

 

もうひとつは、若者自身の意欲という内面的な要因です。

 

 

 

中退組も退職組も、そういう状況で、自分がどうやって生きていけばいいのかが見えないわけですから、働く意欲が高いも低いもない。

 

漠然とでも自分の生き方が定まらないと、働く意欲が湧いてくるはずはありません。

 

 

 

社会状況としても、精神的にも、彼らは「働かない」のではなく「働けない」のです。

 

 

 


 

 

 

浩樹君(31歳)大学卒業後、ニ、三年ブラブラしたあとに、一念発起して水道関係のメーカーで、営業マンとして働きはじめました。

 

 

 

とくにやりたい仕事だったのではありません。

 

とりあげず働かなくてはという気持ちでの就職だったようです。

 

 

 

しかし、営業先をまわっては頭を下げ、契約がとれれば営業日誌に記入するという毎日があと何十年も続くかと思うと、ゾッとしたと言います。

 

 それで二年間ほどマンションにひきこもってから、うちにやって来ました。

 

 

「ひきこもり フリー素材 人物」の画像検索結果

 

 

働くとなれば、どうしても営業職の求人が多いけれど、それにはどうしても興味が持てなかった、と彼は言いました。

 

働く意欲がなかったわけではありません。

 

仕事にやりがいや希望が見つけられなかったのです。

 

 

 

浩樹君以外でも、若者が職探しするとなると、ハローワークに行くか、就職情報誌を買ってくるくらいしか思いつくことはありません。

 

うちの若者の言動で笑えるのは、変なところで生真面目というか融通がきかない点です。

 

 

 

先日も大笑いしたのですが、高校中退の男の子がいて、一生懸命アルバイト情報誌を見ながら赤ペンで印をつけているのです。

 

よく見ると、応募要項に学歴不問と記載してあるところだけに、ぽつぽつと丸印をつけていました。

 

職種も問わずに、彼はただ「学歴不問」から職探しを始めているのです。

 

 

 

「おまえ、居酒屋のアルバイトで高卒以上が条件なら、北海道の〇〇高校卒とでも適当に書いておけばいいだろう」

 

 

 

私が思わずそう言うと、そういう点は変に真面目というか、融通がきかないというか「いいえ、ぼくは中退ですから」と少しも譲らない。

 

 

 

昨年、突然、寮を出て働くと言い出した男の子もいました。

 

人間関係もうまく築けていないし、何かやりたい仕事が見つかったわけでもありません。

 

引きこもりを解消できたこと以外の進展はまだないわけだから、私はそう焦るなと彼に言いました。

 

 

 

でも、とにかくアルバイトをしてみるの一点張り。

 

おまえ、28歳にもなってアルバイトでいいのかと私が言うと、

 

 

 

「経済的な自立が大人への第一歩でしょう」

 

 

 

と言うばかりで、まるで聞く耳を持ちません。

 

彼もまた、親にこれ以上経済的な負担をかけたくないという生真面目さから、焦っていました。

 

 

 

仕方ないから、好きなようにしろと退寮させましたが、その後のお母さんの話によると、アルバイトを始めたものの三カ月しか続かず、いまはまた実家で引きこもっているそうです。

 

 

 

焦れば焦るほど働けなくなる。

 

 

 

彼もまた、「働かない」のではなく「働けない」のです。

 

 

 


 

 

 

もちろん、仕事へのやりがいや希望を見つけられなくても、毎日深夜まで懸命に働いている人もたくさんいます。

 

それをもって、ニートや引きこもりは甘えていると、批判する人がいることも承知しています。

 

 

 

しかし、そういう働き方や人生は幸せなのでしょうか。

 

自分の子どもたちにも、自分と同じような働き方や人生を歩ませたい――

 

そう考えている大人たちは、いったいどれくらいいるでしょうか。

 

 

 

最近、大企業のスキャンダルが続発しています。

 

有名な経営者や企業幹部が、社会的な不正や違法行為を犯したとして逮捕されているのです。

 

あんな大企業でも、社長が暴走してしまうと、誰も止められないのです。

 

 

「不祥事 人物 フリー素材」の画像検索結果

 

 

こういう事件が続発するのは、「働かざざるもの食うべからず」という労働倫理そのものが、どこかで歪んできているシグナルではないかと私は考えています。

 

 

 

本来、働くことや企業組織の維持は、豊かな生活や社会を実現するための手段のはずです。

 

しかしいつからか、働くことや企業組織の維持そのものが目的になってしまったために、不正行為・違法行為をしてまで企業組織を維持しようとしてしまったのではないでしょうか。

 

 

 

ただ、くれぐれも誤解しないでいただきたいのは、誰かを糾弾するつもりは私には毛頭ないということです。

 

戦後の高度経済成長を経て、私たち大人の働き方はどこか歪なものになってしまったのではないか――

 

私はそんな疑念を持っているだけです。

 

 

 

若者たち自身は無意識かもしれませんが、ニートとフリーターが合計約270万という現象は、そんな歪んだ働き方を拒む、若者たちのひとつのシグナルなのではないか。

 

 

 

私は最近そんなことを考えはじめているのですが、これについては、この本の後半でさらに詳しく触れたいと思います。

 

 

 

「希望のニート」二神能基著 2005年6月2日刊行 より

 


 

 

このテキストは株式会社東洋経済新報社(以下「出版社」という)から刊行されている書籍「希望のニート」について、出版社から特別に許諾を得て公開しているものです。本書籍の全部または一部を出版社の許諾なく利用することは、法律により禁じられています。

 

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